アレクサンドル・カントロフのピアノリサイタル 東京オペラシティ 2022/6/30

鑑賞記

ものすごいものを見てしまった…。ダークに佇む神がいた。

2022年6月来日のフランスのピアニスト、アレクサンドル・カントロフ(Alexandre Kantorow)のピアノリサイタル@東京オペラシティに行きました。

言葉では形容できない圧倒的な音楽がコンサートホールを包みました。異世界。

昨夜はなかなかその世界から戻ってこられず、感じたことの走り書きだけメモ帳に書いて寝た。今日起きたらものすごく疲れてたんですけど!ウォーキング行けず。

「GOD」だと思った。

アレクサンドル・カントロフ@東京オペラシティ

2022年カントロフさんの来日ツアーは大阪、東京、名古屋の3都市。昨年2021年の秋に来日された時は迷った末にリサイタルに行かなかったのですが、なんで行かなかったのか、自分で昨年の自分を殴りたいです。

カントロフさんのピアノリサイタルはキャッチアップが遅れてチケットを購入したのが遅かったので、良席が買えず。

アレクサンドル・カントロフのピアノリサイタル@東京オペラシティ

S席の良い席はほとんど売り切れてしまっていたので、3階のB席。遠くのA席より近くのB席派なんだけど、深く座るとピアニストのお姿が見切れるのでS席の良席で見たかった。これは本当に悔やまれます。

前方の席はピアノの音が直に聴こえてくる感じだけど、3階だとホールに充満した音が聴こえて、迫力や音の厚みは前方の席よりあるかなと思いました。カントロフさんの圧と層がすさまじかったということなのかもしれないけど。

リサイタル開始前にカントロフさんご本人の声によるアナウンスが流れました。Bonjour(je suisと言ってたのかな?)Alexandre Kantorow、お楽しみくださいって。はい、楽しみます!

演奏曲

ほとんど短調の、絶望やら死を感じるようなプログラム。

重たい曲が多くて私でも理解できるかなーと少々心配だったのですが、真の音楽家にかかってはそんな心配ご無用でした。

1部演奏曲
リスト:J.S.バッハ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」BWV12による前奏曲S.179
シューマン:ピアノ・ソナタ第1番

リスト作曲、バッハのカンタータ「泣き、嘆き、悲しみ、おののき」による前奏曲からスタート。ものすごく重たい出だしがこの日の演奏の方向性を決めるような感じに思えました。

そのままシューマンのソナタへ。白鳥のようなしなやかな体と、スネーク的な腕の動き。芸術家と野生動物が重なる瞬間。しなやかな体からは想像できないペソのある音と、厚い層の音楽。

ピアノを演奏しているというより、会場の波長を動かしているようにも聴こえます。

期待高まる第2部。

2部演奏曲
リスト:
巡礼の年第2年「イタリア」ペトラルカのソネット第104番
別れ
悲しみのゴンドラII
スクリャービン:
詩曲「焔に向かって」Op.72
リスト:
巡礼の年第2年「イタリア」ソナタ風幻想曲「ダンテを読んで」

もう2部は言葉にならないです。すばらしいという言葉では表しきれない。

何かの終わりや死を思わせる曲が並び、人生観を見つめさせてくれるような。

1部では演奏開始まで集中する間があったけど、2部は出てきてすぐ演奏が始まりました。

ペトラルカのソネットのリブレで弾いているようなたっぷりの出だしを聴いて、リストは晩年に人生を振り返りながらこのように演奏したのだろうか。そんな風に思った。人生を俯瞰した上で、その中に濃密に入り込んだみたい。

リストの曲は技巧的なイメージがあったのだけど、確固たる技巧を上回る詩的表現と深い抒情性があるのだということをカントロフさんの演奏で体感しました。

語彙力なさすぎてカントロフさんから感じたものを言葉で表現できない。深い山奥の精神世界を感じるような時間でした。

ラストのダンテソナタは圧巻で、ホールごと轟かせてた。ピアノ1台でオーケストラのようなあんなに層の厚い演奏を聴いたのは初めてかもしれないです。そして間の操り方は神。

時折見える救いの手のような美しさ。あのラストに見えるものが天国なのかは私にはわからない。

アンコール
グルック(ズガンバーティ編):精霊の踊り
ストラヴィンスキー(アゴスティ編):バレエ「火の鳥」フィナーレ
ヴェチェイ(シフラ編):悲しきワルツ
ブラームス:4つのバラード Op.10 No.2
モンポウ:歌と踊り Op.47-6
ブラームス:4つのバラード Op.10 No.1

アンコールもすごくて。カーテンコールに何度も応じてくれて「じゃあ弾こっかな」みたいな感じで6曲。これは第3部でした。

悟りの境地みたいな「精霊の踊り」からの「火の鳥」の気高い美しさよ。この重たいプログラムの中で燦々と輝く不死鳥。

そしてアンコールでこんな厳格なブラームスを聴くことになるとは。人生詰んでる私はブラームス先生に諭されてる気分になりました。

パッと思い浮かんだヨーロッパの大聖堂。厳しくも包容力のある神々しさ。

カーテンコールは写真撮影OK(演奏中はNG)だったけど、あまりの衝撃と充満しすぎた心で拍手に夢中になって写真撮るの忘れてたYO.

とうとうホールの明かりがついてスタンディングオベーション。コロナ禍以来、客席から「ブラボー」のかけ声は禁止になっていると思いますが、溜まらずブラボー!叫んでたお客さん複数。気持ちわかる。

昨夜もすぐ電車には乗らず、代々木公園駅までてくてく歩きました。たった今見た、聴いた世界はなんだったのか考えながら。

▶︎ A La Russe -Sacd-にアンコールで演奏した火の鳥「フィナーレ」が収録されています。蘇る不死鳥!

チャイコフスキーOp.72 No.5 Méditationとても素敵で絶賛リピート中。まろやかな音とペダリングが最高なんですけど。Méditationはチャイコフスキー1次予選の演奏も必見。

▶︎ ブラームスのバラードはAlexandre Kantorow Brahms: Piano Worksに収録されています。

リサイタルとほぼ同じプログラムと思われる2022年3月の動画が、France MusiqueのYouTubeチャンネルに曲ごとにアップされています。

GOD

Quitarse el sombrero.

音楽家としてその先を表現する説得力。参りました。

全曲通したプログラムで1つの人生観のような感じだったから、曲間で拍手が入らず、最後の音が消え入るまでお客さんもじーっとしているのが良かったです。空席がちらほらあったのが本当にもったいない。

NHKの収録カメラが入っていたので、そのうち放送されそうです。絶対見るわ!

でも演奏は生で聴くのが大切だということも再認識。次カントロフさんが来日される時は、予定を見逃さずS席確保しなければ。

言葉で形容することができないほどの真の音楽家、「GOD」でした。

追記!8月12日(金)NHK BSプレミアムの「クラシック倶楽部」朝5:00〜だそうです。

さらに追記!9月8日(木)の19:30〜NHKラジオの「ベストオブクラシック」で放送されるそうです。

moni

引きこもり中のゆるい推し生活を綴ります。スペインのセビージャでフラメンコ留学してました。趣味でピアノを習っていたのは4歳〜16歳くらいまで。素人です。話す言...

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