芸術は一瞬

ノート

毎日ショパンコンクールで世界のいろいろなピアニストの演奏を聴くことができて幸せです。

あと3日で終わってしまうのはちょっと寂しい。

「芸術は一瞬」常々考えていたこの言葉を、ショパンコンクールでもたくさん感じました。

芸術は一瞬

この言葉は私のフラメンコの先生がよくクラスで言っていた言葉です。

Arte es un instante.

英語だと「Art is for an instant.」でしょうか。(英語あまりワカラナイ)

それまであまり意識したことはなかったけど、その通りだなと思ってずっとこの言葉が頭に残っています。

フラメンコのライブや公演、もしくはフィエスタなどで演奏や踊りを見て、ゾクっと感じる動きや音の表現、歌い手の声の震えやquejío(こぶしのようなもの)。

これらは全てずっと継続されているものではなく、瞬間的に体験する、目撃することです。

三島由紀夫はこのような言葉を残しているそうです。

音楽の美は、その一瞬の短さにおいて生命に似ている。

ピアノの一瞬の芸術

ピアノの演奏を見て感動した時、そのピアニストの演奏を隅から隅まで全て覚えているわけではない。

気持ちを揺さぶられた一音や、心を掴まれた1フレーズや、芸術に向き合うピアニストの一瞬のまなざしなど、演奏の中で見たどこかの瞬間が強烈で、すばらしい!と感動するのだと思います。

それは演奏の中で何度も起こる瞬間かもしれないし、もしかしたら1回の演奏の中で1度しかないかもしれない。でもその1回の一瞬にものすごい惹かれたら、心の底から感嘆が生まれます。

テクニック的にはとても上手だし美しい音なのに、自分にはなんだか迫るものがないなという時は、その一瞬を感じることができなかった時なのだと思います。

理屈なしにガッと心を持っていかれる瞬間。

心臓がわさわさして鳥肌が立つ、なんとも表現しがたい一瞬です。

そんな瞬間に立ち会えたら、この演奏を聴くことができてよかった!このピアニストに出会えてよかった!と思います。

YouTubeのような動画で残されていれば、何度もその瞬間をリピートしちゃうやつですね。

コンクールだとそんな一瞬の凝縮よりも、全体的な出来や説得力を重視するのかもしれませんが。

音楽ライターの高坂はる香さんがブログにあげて下さったショパンコンクール出場者へのインタビューで、ゲオルギス・オソキンス(Georgijs Osokins)さんの言葉が好きすぎました。

コンクールだからといって、それに合わせてプログラムを組むなんて僕にはできない。演奏は、いつだってアートでなくてはいけません。

音楽は、その場で生まれる魔法のようなものでないといけないのです。

Oleeeee!!オソキンスさん大好きです。

音楽作品における一瞬の芸術

特定のアーティストの演奏に限らず、音楽作品においても一瞬の芸術が存在すると思います。

作品の中で「ここの旋律が好き」「ここの和声がたまらない」など、自分のハートをぎゅっと掴むポイントがあると思うのですが、そこが一瞬の芸術。

作曲家はそういう瞬間を意図的に楽譜に反映させることができるのか、才能やセンスが楽譜に反映されるのかわかりません。

なぜか耳から離れないメロディーやハーモニーは、一瞬の芸術が詰まっているからではないかと思います。

時間の流れと一瞬の芸術

フラメンコやピアノの演奏のように時間の流れと共にある芸術は、心が湧き上がるような一瞬がよりわかりやすいです。

例えば私は花火が大好きなのですが、花火も一瞬の連続の芸術です。

花火が打ち上がっている間の昇り曲導の美しさ、花火が開いた瞬間の勢いや位置、玉の形の均等や花火の色、花火が消えゆく時の儚さや余韻など、人それぞれ心を奪われる瞬間は異なると思います。

その日の自分の気分によっても、心に響く一瞬は変わります。

私は絵画や美術作品などの時間の流れと共にない芸術に触れることがあまりありません。絵画知識皆無我。それを前提として…

例えば絵画の場合はもちろん全体としての評価もさることながら、この部分のタッチが繊細だとか、この部分の色彩表現が豊かだとか、どこかの部分に魅力を感じたりすることがあるのかなと想像したりしています。

一瞬の芸術を楽しみに

今日の夜中からショパンコンクールの本選(ファイナル)が始まります。

2次予選と3次予選は毎日感想を書いていましたが、ファイナルの感想を毎日書くことはしないと思います。

ファイナリストたちの一瞬に出会えるのを楽しみしています!

moni

引きこもり中のゆるい推し生活を綴ります。スペインのセビージャでフラメンコ留学してました。趣味でピアノを習っていたのは4歳〜16歳くらいまで。素人です。話す言...

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