読書感想文|ショパン・コンクール – 最高峰の舞台を読み解く

AmazonのブラックフライデーでKindleを安く購入したので、Kindleで読める本を読み始めています。
今読み終えたのはこちら。
ショパン・コンクール – 最高峰の舞台を読み解く -青柳いづみこ著(中央公論新社)

なかなかおもしろかった!
そんなことまで書いていいの?と思うようなことも書かれていたり、興味深いなと思いながら一気に読みました。
ネタバレしない程度に読書感想文を簡単に書こうと思います。

過去のコンクール動画を見ながら読む
こちらの本は2015年のショパンコンクールの様子が細かく描かれています。さらに2010年など2015年より過去のコンクールのことも出てきます。
2010年優勝者のユリアンナ・アヴデーエワさんが、ビデオ審査を通過しなかったという話は初めて知りました。ビデオ審査は数が多くて大変なのだろうと思いますが、コンテスタントからすると誤って落選というのは怖い話です。
予選の演奏の様子はコンテスタントの名前入りで詳しく書かれているので、著者の評を読みながら過去のコンクール動画を観たりしました。
とても多彩で理解しやすい文章で書かれていて、新しい演奏家を知ることができたし、文章と照らし合わせながらエリック・ルーさんやケイト・リウさんの演奏を改めて聴いて、新しい発見がありました。
縦書きの本なので、コンテスタントのお名前が全部カタカナなのはちょっと読みづらかったけど…。
オソキンスの椅子
オソキンス様と言えば椅子が低いことで有名ですが、「オソキンスの椅子」という章がありました。これが一つの章になってるのです。
椅子のことだけではなく、オソキンスさんの演奏スタイルやYAMAHAで奏でる音や表現力のことなど、フォーカスして下さってとても興味深く読みましたし、共感しました。
イ長調部分はとろけるように甘く、重音は蜃気楼のような響き
とろけるように甘く…本当にそうですね!
オソキンスさんのお兄さんアンドレスさんのことも書いてあったり、オソキンスさんの記述が多いのでオソキンス様ファンの方は嬉しく読めるのではないでしょうか!
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ボジャノフさんの一件
オソキンスさんと同じくとても低い椅子で演奏するボジャノフさん。ボジャノフさんはオソキンスさんの兄弟子だということが、こちらの本にも書かれていました。
個性派ボジャノフさんの2010年のコンクールでの一件については、こちらの本で知りました。この内容が真実だとすれば、ボジャノフさんは複雑な心情だっただろうなと思いました。
この年のボジャノフさんの演奏はYouTubeで観ましたが、すばらしかったです。サブスクもよく聴いています。
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ポゴレリチ事件
有名なポゴレリチ事件のことも書かれています。
ダンタイソンさんはコンクール出場時にロシアの音楽院に在籍していたのみで国際コンクールの経験がなく、彼も一度書類審査で落選しているという話を読み、これにも驚いたのでした。
1980年コンクールで優勝し、現在は審査員で多数の生徒をショパンコンクールに送り込んでいるダンタイソンさんが書類で落選していたなんて…。
今回のショパンコンクールでも陰謀論を目にするたびに心がしぼんでいたのですが、ポゴレリチ事件の時はダンタイソンさんも陰謀論に巻き込まれただろうな(陰謀論が本当なら書類審査で落選することはないはずなので)といらぬ想像と心配をしてしまいました。
携帯電話の着信音問題
各章の内容とは別に、こぼれ話的な記載があるのがよかったです。
携帯電話の着信音問題についても触れており、「そーだそーだ」と思いながら読みました。
今年のショパンコンクールを配信で観ていて、携帯電話がよく鳴ることにびっくりしたし、残念な気持ちになりました。舞台上の演奏者に聴こえて集中力が削がれていなければいいけど…と心配になったほどです。
1次予選のユトン・ソンさんのノクターンの最後、2次予選のオソキンスさんの幻想ポロネーズ、2次予選のイ・ヒョクくんのスケルツォ、さらにはファイナルの反田恭平さんやハオラオくんの演奏中も携帯電話の無神経な音が鳴り、観ているこちらが「ガルル!」となりました。
2015年のショパンコンクールでも携帯電話がよく鳴っていたようで、マナーについての言及がありました。
演奏が始まる前に携帯電話をオフにするのは前提なのだけど、忘れる人もいるということを踏まえて、ワルシャワフィルハーモニーホールにも圏外発動装置を導入してほしいなと思いました。
「携帯電話の基地局と同じ周波数の電波を基地局よりも強く出す」ことで、ホールをまるごと圏外にしてしまうという仕組み。日本のホールでは導入されているところもあるようです。(オペラシティは導入されてた)
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あっという間に読んだ本
「ショパン・コンクール – 最高峰の舞台を読み解く」青柳いづみこ著(中央公論新社)はコンパクトな本なので、あっという間に読んでしまいます。
裏話的な話や個人的な批評もあり「ここまで書いていいのかな?」と思う部分もありましたが、ニュートラルな気持ちで読んで新しい発見がありました。
今年のショパンコンクールを観てこのコンクールに興味を持った人や、ピアノに興味を持った人は読んでみると興味深い部分がたくさんあるのではないかなと思います。

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