読書感想文|モーツァルト(礒山雅著)

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映画「アマデウス」を観てモーツァルトの生涯のことを詳しく知りたいなと思ったので、Kindleで「モーツァルト」という本(礒山雅著)を読みました。

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著者の礒山雅氏はバッハ研究が専門だそうですが、モーツァルトについてもかなりお詳しく、単なる伝記以上の内容になっています。

モーツァルトの音楽や作品ごとの魅力、楽曲のどこに着目して聴いたらいいかなどが細かく書かれていて、今後の鑑賞を豊かにしてくれそうです。

ネタバレしない程度に「モーツァルト」の読書感想文を書きたいと思います。

たくさんあるモーツァルトの伝記

さすがのモーツァルトは伝記がたくさんあります。小学生でも物語調のものから、マニアックな伝記まで。

礒山雅氏のこちらの本「モーツァルト」は文章は難解ではないけど、内容はある程度モーツァルトの音楽を知っている人向けだと思います。

人生をなぞるだけの伝記ではなく、どんな時代にどの作品を書いたのか、その楽曲の魅力なども書かれているので、伝記とモーツァルトの音楽美学の中間のような感じ。

著者の専門はバッハだと書いてあったけど、モーツァルトについてもかなり熱弁で、モーツァルト愛を感じました。

楽曲の魅力がわかる

こちらの本の興味深いところは、モーツァルトの作品の魅力がよくわかるところです。

モーツァルトの生涯に照らし合わせて、その時期に作曲された楽曲名が言及され、その楽曲の背景や優れている点、着目して聴くべき点などが書かれています。

35年の短い人生の中でも300曲以上を作曲したと言われるモーツァルト。こちらの本では楽曲の名前がたくさん出てくるので「これどの曲だ?」という事態が多発しました。

モーツァルトファン、クラシックファン歴が長い人はパッと「あの曲ね」と思いつくのでしょう。

私はそうではないので、時には本を読みながらApple Musicで検索して楽曲を聴き、「あぁこの曲か!」と線がつながったり、「この曲初めて聴きましたで候」とやっておりました。

ピアノ協奏曲第20番のコーダが二長調に変わるところ、モーツァルトが時代の慣習に妥協したと惜しむ人もいるようですが、筆者さんは明るく終わっていいというご意見でした。「レクイエム」も長調で終わらせてほしかったくらいとのこと。

私は長調に変わる瞬間が大好きなので、他の意見もあるんだなと興味深く読みました。「レクイエム」が長調で終わるのも見てみたかった。

オペラの説明は難しい

モーツァルトと言えばオペラですよね、たしかに。

オペラの説明はかなり著者の熱量があるような気がしたし、文章も多かったです。

とても詳しく書いてあって、この場面のここは〜とオペラシーンについての記述が多いのだけど、オペラ観てないからわからなかった…。シーンの想像まではちょっと難しかった。

どうやって伝記が作られるのかの考察

読んでいておもしろいなと思ったのは、モーツァルトの伝記がどのようにして作られていったのかの考察です。

モーツァルトの伝記が多い理由は、モーツァルトが人気の作曲家だということもありますが、旅が多くよく手紙を書いていて自筆の手紙が比較的残っていることも関係しているのだと思います。

姉ナンネルの証言と、妻コンスタンツェの証言を主として伝記は作られていったようですが、ナンネルとコンスタンツェは仲が良くなかったので、ウィーンでの生活のことは姉ナンネルはよく知らないスタンス。

妻コンスタンツェは、モーツァルトの生涯について多くを語らなかったようです。なのでモーツァルトがより神格化され、伝記にもそれが反映されていったという見方。

モーツァルトの死後のコンスタンツェは、割とビジネス面でやり手のイメージがあって、コンスタンツェはモーツァルトを謎のベールに包むことで価値を高めようとした説はあり得るかもと思いました。

モーツァルトの自筆台帳

ベートーヴェンは自分で作品にOp(作品番号)をつけているけど、モーツァルト以前の作曲家は作品番号をつけたり、台帳をつける習慣があまりなかったようです。

でもモーツァルトは自分で台帳のようなものをつけていたようで、その台帳の一部が写真付きで載っています。

興味深いのは作品名の横に楽譜の冒頭部分が筆記されていること。テンポ表示は自筆の楽譜と異なるものもあるらしくて、書き写し間違えたのか、途中でテンポを変えたくなったのか、謎が深まります。

身の回りのことを整理整頓するのは苦手なモーツァルトのイメージですが、作品リストは几帳面に意外とつけてたんだなと。もちろん抜けてるものもあるみたいだけど。

ゴットフリート・ファン・スヴィーテン

映画「アマデウス」で宮廷の中で一人バッハに好意的なおじさまがいらっしゃいますが、彼はゴットフリート・ファン・スヴィーテンという名の音楽愛好家、アマチュアの音楽家です。

映画の中の俳優さんが良かったこともあるけど、スヴィーテン男爵は気になっていた存在でした。こちらの本に少しですが登場します。

バッハやヘンデルのコレクションを行い、自宅で毎週のように演奏会を実施。モーツァルトはスヴィーテン男爵の家に招かれ、演奏したりバッハやヘンデルの音楽に触れる機会をもらいました。

モーツァルトの人気が低迷してモーツァルト自主企画の演奏会に人が集まらない時も、彼だけは名簿に名前があったそうで、厚いサポーターだったことがわかります。

後にはハイドン、ベートーヴェンの音楽生活も支え、ベートーヴェンの交響曲第1番はスヴィーテン男爵に捧げられています。

古典派時代の作曲家にとって彼のサポートは大きな影響を与えていたはず。彼がいなかったらモーツァルト、ハイドン、ベートーヴェンは多少なりとも違う人生を送っていたのではないかと考えてしまいます。

モーツァルトに見るバッハの影響

モーツァルトはウィーンに来てからバッハのことを知り、バッハの音楽に感銘を受けたと言われています。

バッハの死後からメンデルスゾーンが復活させるまで、バッハの音楽は一度忘れ去られてしまったイメージがあったけど、ヴァン・スヴィーテン男爵のような愛好家や、モーツァルトのような音楽家はバッハの神々しい音楽をさすが見抜いていたんですね。

モーツァルトの後期の作品にはバッハの影響を見ることができるそうで、バッハ専門の礒山雅氏の視点による影響範囲や、モーツァルトとバッハの音楽の根本的な違いについての記述はこちらの本ならではだと思います。

サリエリとの関係

映画「アマデウス」からの流れだとサリエリのことも気になります。こちらの本にももちろんサリエリは登場しました。

毒殺説は今日の研究では否定されているようですが、モーツァルトとサリエリがよきライバル関係だったのは間違いなさそうです。

モーツァルトの自筆の手紙には(確か父か姉宛の手紙)、サリエリに嫉妬する様子が書かれてるって他の伝記で読んだことあるので、モーツァルトの方が宮廷作曲家のサリエリに闘志むき出しだったのかもしれないです。

おすすめ記事 ▷ 映画「アマデウス」ディレクターズカットの感想文|サリエリ毒殺説

モーツァルトおすすめ作品と解説

本の最後には著者のモーツァルトおすすめ楽曲とその作品に対する解説が書いてあります。これはとてもありがたい!

作品が作曲された背景、作品の特徴や聴きどころが書いてあるだけでなく、この作品を聴くならXXのYY年の録音のCDが良いと音源のおすすめまでしてくれているのです。

解説文を読みながら該当のCDを聴くと、モーツァルトの作品への理解が深まりそうだなと思いました。今気になる作品から、おすすめの音源を聴いてみてるところです。

伝記+αの本

伝記+αの部分が充実している本で読み応えがありました。特にバッハ専門の著者視点で作品の魅力が書かれているので、今後の鑑賞をより豊かに興味深くしてくれそうだと思いました。

起こったことを時系列でつらつら書いてあるだけの伝記本だと飽きちゃうからね。

おすすめ作品は有名な曲ばかりですが、解説を読みながら聴くと新たな視点を投入してくれて楽しいです。こんな音楽美学の視点を自分も持てたらいいのに。

そうそう、本に書かれていた「モーツァルト」という名前のペンション。部屋の番号がケッヘル番号なんだって。いつか泊まってみたいと思いました。K.626以外の部屋で!

moni

引きこもり中のゆるい推し生活を綴ります。スペインのセビージャでフラメンコ留学してました。趣味でピアノを習っていたのは4歳〜16歳くらいまで。素人です。話す言...

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