ブルース・リウ インタビュー「ショパンと彼のヨーロッパ音楽祭」

ブルース・リウくんが8月にショパンと彼のヨーロッパ音楽祭に出演した時のインタビューの様子が、昨日Chopin InstiteのYouTubeチャンネルにアップされました。
最近英検の勉強をしていて スタディサプリENGLISH(新日常英会話コース)を毎日やっているのですが、そのおかげか英語のリスニング力が上がったような気がします。イェイ。
字幕なしでも、動画を途中でストップせずに理解できることが前よりも増えた気がする!嬉しいぃぃ。
ショパンと彼のヨーロッパ音楽祭に関して、古楽器についてなど今までのインタビューにない内容で興味深かったので、英語練習も兼ねて訳してみます。
ブルースくんはインタビューの中にジョークをたくさん混ぜてくれるので、やっぱり話が面白いし人を惹きつける魅力がありますね。
ショパンと彼のヨーロッパ音楽祭
今まで1つのフェスティバルで3回演奏したこと、1日で2回演奏したことはありますか?
どっちもない。どちらも初めて。
初日コンサートの方は途中で演奏順が変更になったので、2つめのコンサートはラストの演奏順になった。それは真夜中(に演奏する)な感じでした。
1つめのコンサートは18時スタートで、普通のリサイタルではなく2つのドン・ジョヴァンニを演奏しました。最初に2つのドン・ジョヴァンニを演奏したのは6月にドイツだったんですが、演奏し始めてすぐこの2つをプログラムに入れたことを後悔しました。
とっても疲れる、疲労困憊。夜に20km以上ランニングするような。
そして気づいたんです。次の全シーズンでこのプログラム組んじゃってるやんと。つまりこのプログラムを1年演奏するということです。(そんな疲労困憊のリサイタルプログラムの後に)古楽器で演奏するもう一つのコンサートがあったわけだから、どんな感じか想像できるでしょう。
ステージに出てすぐ「眠りに帰ってもいいですか?」という動きをしたくらい(疲れてた)で、演奏しました。笑。
来年の来日リサイタルもショパンとリストのドン・ジョヴァンニがプログラムになってますね。なかなか盛りだくさんなプログラムなので、疲労困憊な姿を想像しちゃいました。
ピアニストは本当に体力勝負やね!
ピリオド楽器
古楽器のピアノを初めて演奏された感想は?
気に入りました。フェラーリ250GTのようなヴィンテージカーを運転している感じだった。
その時代の作曲家が求めていた音により近いと思うので。
テクニック的には現代のピアノほど完璧じゃないと言う人もいるかもしれないけど、そこが芸術の魅力であると思う。(現代ピアノほど完璧じゃないと言うのは)何か演奏をした時に批判する人がいるのと同じで、「この演奏は完璧じゃない」と言う人がいるけど、では“完璧”とは何なのか?
私にとってパーフェクトとは完璧ではない要素を集めることで、最終的になんとかしてそれらが働くというような。それが最終的な目標。
全てのディティールが完璧だと、結局問題がある。感情や自然発生的な面がなくなる。それはピアノという楽器についても同じ。古楽器は(現代のピアノが)どのように始まったかのスタート。エラールのダブルエスケープメント(ピアノのアクション)というピアノの発明、そのおかげで素早く連打できるようになった、これは現代ピアノへの発展の始まり。
ショパンはプレイエルを愛用していたようですが、リストはエラールを好んでいたみたいですね。
(で、この後よく聞き取れなかった)
「芸術は不完全である」と私は思っているので、ブルースくんと考えが一致していて勝手に喜んでます。
古楽器とモダン楽器の違いをどう表現しますか?
最初はキーが軽くてびっくりしました。速く演奏してしまう危険性があるなと。
古楽器で意識することは、ペダルをより踏むこと。
以前にベートーヴェンのワルトシュタインを弾いた時に、スコア上は3楽章で3ページに渡ってペダルを踏まなければいけなくて、若い頃はそれが理解できなくてベートーヴェンはバ○かと思った。現代ピアノではハーモニーがぐちゃぐちゃになって無理なので。でも古楽器で試してみたら完璧に実現できたんだ。ショパンに至っては曲調的にさらにそうであると思う。
トーンが低く430Hzとかだと思う。絶対音感がある人には古楽器は悪夢なのでは。
でも僕は大丈夫。絶対音感ないので文句ないです。笑。
ベートーヴェンのくだりがおもしろかった。エラールのピッチ調べたら、A=430Hzでした。
この経験は古楽器をまた演奏する刺激になりましたか?
そう思います。特にアンコールでラモーを演奏した時、私のステージ人生の最高の瞬間でした。
バッハ、ラモー、スカルラッティなどの歴史ある曲を演奏したいと思っていたので。
特別な魅力があり、10分後には壊れちゃうものすごく古い車を運転しているような、歴史と正真正銘さを感じる。
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ショパンの楽曲
ショパンコンクールのファイナルでは協奏曲第1番を演奏しましたよね、インタビューでは協奏曲第2番の方が好きだと言っていましたが、なぜですか?
そんなこと言ってましたか?マジか…何を考えていたんだろう。
うーんと、そうだね、確かに正直言うとそうかもしれない。
なぜかというと2番の方が短いから、ミスする可能性が少ない、だって2番は30分だけど1番は40分だもの。とか言ってみたけど冗談です。(2番の)第二楽章はショパンが作曲した中でもっとも美しいメロディで、中間ではオペラのようなドラマがあり、彼の傑作の一つだと思います。
1番の方は自分がやりたいことがよりクリアで、2番はまだ確信が持てていない部分があるので演奏するごとに毎日変わるかもしれない。審査員や聴衆に対しても2番はそういう印象を与えると思うので、だからコンクールでは2番は選びませんでした。
でも私の個人的な感情としては2番が好きです。
私も2番の方が好き。っていうか2番がとても好き。
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あなたは(コンクールの時に)「お手をどうぞ」の変奏曲で聴衆を魅了しました、今回のフェスティバルでも演奏しましたね。この曲はあなたにとって特別なものですか?
はい、基本的にほとんど全てのコンサートで演奏してます。
18世紀オーケストラと古楽器で演奏して、本日のアンコールでもオーケストラと演奏したのも楽しかったし。
この数日で、可能性のある方法でこの楽曲を演奏してみました。1人で(たくさんの方法で演奏して)ごめんね笑。
特にソロリサイタルで演奏する時は、10月に戻ったみたいにコンクールを思い出します。天井を見て、再生成するような、それはとても不思議な感覚です。
フェスティバルを締めくくる最初のアンコールはドン・ジョヴァンニでしたが、2つ目は何を演奏しましたか?
何弾いたっけ?あぁジャズの(エリーゼのために)だ。
ジャズピアニストが書いた編曲です。もちろんちょっと変えたりしたのだけど。
実はオーケストラと「お手をどうぞ」の変奏曲を演奏した後にアンコールがあると思ってなかったので、袖に長いこといたんだけど、拍手止まない系?と思ってステージに出て、何弾けばいいかわからなかった。
だいたいアンコールのことは少し考えているのでこういうことは起こらないんですが、今日はちょっと想定外でした。
現在と今後
リサイタルに話を戻しましょう。ショパンとリストに次いでラヴェルやラモーも演奏しましたね。現在はこれらの作曲家に焦点を当てているのですか?
プログラムの核は2つのドン・ジョヴァンニです。
フランス音楽の間にショパンとリストのドン・ジョヴァンニを入れて、ロマンティックから少し離れて、ラヴェルは幻想や感覚を得て構成や音程から逃亡する。
バロックからスタートするのはミスがないです。特にラモーは現在探求に取り組んでいる曲です。ラモーは少し忘れられている部分があって、バロックというとバッハやスカルラッティ、フランス音楽と言うとドビュッシー、ラヴェル、フォーレが話題に上がりけど、ラモーを話す人がいない。
僕はラモーはバロック期の作品の中で最も妙技なものだと思います。ハーモニーと理論の父でもあります。
もちろんクープランはテクニックの発展の寄与したので、彼ら2人は鍵盤音楽技術の基本的なスタートなので、なぜ忘れられているのかわからない。
ラモーの「Le Sauvage」は「Les Indes galantes」のオペラで知っている人が多く、聴衆にもわかりやすい曲なので単に何度も演奏され続けていますが、私たちが他にできることがあると思う。
アーティストとしての夢はありますか?
即興できるようになりたいです、でもできるかどうかわからない。
指揮者になりたいかな〜そうしたら練習時間が少なくて済みますね。
現在どのようなレパートリーに取り組んでいますか?
ソロ曲に加えてコンチェルト。ラフマニノフ、チャイコフスキー、ベートーヴェン、ブラームス。
みんなに驚かれるのがシューベルトを演奏したことがないので、できるだけ早く取り組まないといけない。シューベルトは30歳になってから取り組むべきだと思っていたんですよね。
ベートーヴェンのハンマークラビアーソナタも同じように思ってたけど、パンデミックで1年延期になった時に新鮮さをキープするために、ハンマークラビアーソナタを学んでみたらいい感じだった。
常にコンフォートゾーンを抜け出して、何が起こるかわからないことを経験する。
コンフォートゾーン
インタビューの最後にブルースくんから「コンフォートゾーン」という言葉を聞けて、なんだか彼にぴったりな言葉のように思いました。
「コンフォートゾーン」を抜け出すのって楽しいだけじゃなくて辛いから大変なのよね。
前向きにチャレンジする精神が素敵だー。
2月の来日楽しみです。
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