ポーランドラジオのブルース・リウ インタビュー

ピアニスト

ショパンバースデーコンサートの翌日に、ショパンミュージアムで行われたブルース・リウBruce Liu×ポーランドラジオAndrzej Sułekさんのインタビュー。

ポーランド語の訳が上にかぶさっていない英語バージョンがYouTubeにアップされていました。

これで苦戦しつつも見られる!(ポーランド語訳がかぶさっているものは無理)英語の勉強をするモチベーションにもなっています。

インタビューの内容抜粋しつつ、思ったことを書きまーす。

ブルースくんの英語は割と聞き取りやすいのですが、インタビュアーのAndrzej Sułekさんの英語が少し聞き取りづらくて(私英語初心者なもんで…)間違ってる部分あったらごめんなさいm(_ _)m

ピアノ

この4ヶ月で音楽家としてどう変わったか?ショパンに対するイメージや曲の解釈、演奏の面で変わったことは?

私のアプローチは異なるホール、ピアノ、オーケストラ、指揮者、聴衆によって毎回変わっています。
特にピアノは(毎回自分の演奏が変わる)大きな要因。
昨日はスタインウェイのピアノだったけど、コンクールの時と音が違った。同じ曲を弾いても全てが違っていた。
衣装も違うし、特に自分の感情も違うし、そういった全てが(演奏に)影響を与える。
ショパンは即興性があって、それが納得するような形で表現される数少ない作曲家。
だからこそ異なるアイデア(捉え方)がたくさんある。それは特別なことだと思う。

コンクールで弾いたファツィオリと、昨日弾いたスタインウェイのピアノのピアノの違いはなんですか?

説明するのが難しいのですが、わかりやすい例をあげるとすると、ホテルで異なるベッドや枕で寝るような感じです。
私にとってスタインウェイはスタンダードで、どのピアノもイコールで品質が保証されている。
ファツィオリはレーシングカーのようで、コントロールが難しい。タッチがとても軽くてかなり繊細。サロン楽器のような感じ。
コンクールでは80人の出場者がいて、慣例的なものにハマりがちにならないように(?)普通とは違うかもしれないけど、私にとっては自分の個性を表現するためにファツィオリを選びました。

ホールで異なるピアノを弾くことについて、「ガールフレンド」から「ベッドや枕」に表現手法が変わったんですね。全世界にガールフレンドがいるっていう表現好きだったんだけどな。笑。

ファツィオリのピアノを「レーシングカー」に例えたのがおもしろいなと思いました。そのコントロールが難しいピアノをコンクールで選ぶチャレンジ精神も素敵だー。

ファツィオリは音色のコントロール(?)がしやすいのですか?

もちろんピアノは重要ですが、ホロヴィッツの言葉を引用すると「よろしくないピアノはないけどよろしくないピアニストはいる」
ピアニストとしては早急に各ピアノに適応するようにしている、それが仕事です。
基本的にピアノはトップの品質なので、毎回変化して適応することが私にとって重要。
どっちのピアノがいいかなと比較したりするよりも、あるものでうまくやり抜けること。

ブルースくんはしばしば偉人の言葉を引用するのが興味深いなと思います。読書も好きなんだろうなと想像。

ショパン

あなたは楽観的だと自分で言っていて、コンクールのプログラムもショパンバースデーコンサートのプログラムもソナタを除いてそうでしたが

いえ、バラードもドラマティックな作品だと思います。
楽観的なのは私の自然なスタイルで、音楽は複雑でショパンはかなり複雑な感情を伴っています。多くの人が言うのは、ショパンは愛国心があってノスタルジックな人。
楽観的なのは私の個性で、音楽においては自分の個性と作曲家に忠実であることのバランスを考えています。

ソナタ、葬送はとてもドラマティックであるけど、毎日異なる演奏、異なるフィーリングです。
ある日ショパンが生徒に教えた方法で生徒が翌日弾いたら、ショパンに「誰に教わったの?」と言われて「あなたが昨日教えてくれたんですよ」と言ったら「そんなはずない」と言われたように。
なのでショパンのアプローチは毎回変わっていて、それが彼の演奏の芸術美学だと思います。

ご自身の性格と作品や作曲家のイメージや解釈をすごく分析してるんだなぁ。ピアニストさんて感覚的な人に見えますが、実はすごくロジカルな部分を持ってるんだなと感じます。

作曲家の生い立ちや人生は彼の音楽を理解して演奏するのにどのように重要だと考えますか?何かショパンの生い立ちについてはよく知っていますよね?

どうでしょう、それについてポーランドで言及するのは危険なことです。
マズルカの話をここ(ポーランド)でするのと同じくらいに。

マズルカ風ロンドについて話してみましょう。これはショパンの人生の中でも特別な、そしてヘビーな(?)ワルシャワの時間につながっています。
あなたの演奏を聴いていると若いショパンがワルシャワの通りを歩きながら口笛を吹いたり、ガールフレンドのことを考えたりしているように思えます。
これは私の主観的な印象ですが、あなたが表現したかったことは?

ショパンのその期間は私にとって近い年代に思います。
ショパンは20歳くらいでパリに移ったと思いますが、私は今24歳でその前の年齢(ショパンがパリに移る前の年齢)とそんなに離れていないので、幸せだったり楽しい時間を過ごしたのだろうなと。
なので、コンクールではマズルカ風ロンドや変奏曲など、ショパンの若い時代の作品を選びました。
これらのショパンの若い時代の作品は少し忘れられていると思います。

そうですね

現在の状況下では「楽しい」とか言うのは良くないかもしれませんが、ショパンの音楽についての話をすると、その時代(ショパンがフランスに移る前)は楽しい時間があり、何も恐れず過ごしやすい期間だったと思います。

マズルカ風ロンドなどショパンの若い時代の作品と、ソナタやバラード、ノクターンなどパリに移ってからの作品があって、これらの作品間を移動するのは難しさはありますか?

私がこのプログラムを組み立てたし、私にとっては自然で、それぞれの曲に関連があります。
例えば、マズルカ風ロンドから同じF majorのバラードに移行するのは私にとっては自然な移行です。同じキーで全く別のムード。
2つのバラードは感情的に繋がりがあります。

あまりドラマティックな時間が続かないようにしています。
ドラマティックな曲の後は少し柔らかい曲にして、柔らかい甘いテイストが観客の喉に詰まってたきたら劇的な曲に変えます。
それと、私はドラマティックな曲よりも輝きのある曲で終わるのが好きです。
なぜなら音楽は人々を苦しめるものではなく、喜びを与えるものだと思うから。

プログラムの立て方は詳しく話を聞くとおもしろい。選曲の理由やなぜその順番なのか。演奏家ごとにこだわりがあり、それを聞いた上で再度演奏を聴くと新しい発見に出会えたりします。

今日はショパンミュージアムでのインタビューを行っていますが、ここにはたくさんのピアノがあります。ショパンが弾いたピアノも含めて。
これらの楽器(フォルテピアノなど)はあなたにとってどんな感じですか?魔法のピアノ?それとも歴史的なもの?あなたの音楽に影響を与えるものですか?

(フォルテピアノは)演奏のアプローチが違うと思います、昨日私が弾いたピアノがコンクールの時と違ったように。
ペダリングの新しいアプローチができるのではないかと思うし、鍵盤が軽い(?)と思ってます。
私はまだその歴史的な楽器に触れていませんが、触れることができると思っています。これちょっとヒントね。

んんん!ヒント気になる!
フォルテピアノを演奏する予定が決まっている!?

モダンピアノの演奏にも影響を与えると思いますか?

少しはあると思いますが、限界があります。
スタインウェイはフォルテピアノよりもスタインウェイの音である必要があるし、ホールにも適応しなければいけないので。音響はいつも変わるから。

レパートリー

レパートリーの広げ方についてのアイデアや、近い将来どんな作曲家を演奏するか?

私はフランス音楽にのめり込んでいます。
ショパンともある種の関連があるので、ショパンから離れた音楽をやるのにいい移行になりそう。同じ方向性にあるようにも思います。

バロック音楽については?

フランス音楽と言いましたが、バロックも含みます。
ラモーやクープランなどフランスのバロック音楽は素晴らしいので、人々が新しいものを発見できるようにしていきたい。
バロックと言うと人々がバッハやスカルラッティを話しますが、彼らは多くのうちの一部です。
ショパンの作品についても同じで、かなりたくさんの作品があるけど、コンクールでは変奏曲を演奏されたことがなかった。

バリエーションをオーケストラで演奏したいですか?

いいと思います。素敵なプロジェクトになると思います。

他のフランス音楽に関してはラヴェルとかは?

もちろん、ラヴェルはいつも私のレパートリーです。

変奏曲 Op.2のオーケストラバージョン聴いてみたいです。今年か来年には変奏曲に関してDGとの新しいプロジェクトがあると言っていたしいろいろ楽しみ。

師匠

ピアノをどのように習い始めたのか?学び方や師匠たちについて

最初は新聞紙に載っていた先生に習いました。8歳くらいで電子ピアノでした。
真剣に学び始めたのは12歳くらいの時で遅く、ピアノに関して言えば今でも趣味ですと言っている感じです。
もちろん少し冗談でもあるけど。でもルーティンにならずに常に情熱をキープしたい。

リチャードは真面目に習い出した最初の先生で、知識やテクニック、しっかりした基礎を教えてくれた。
ダンタイソンは40年前のショパンコンクールの覇者ですが、コンクール2年前まではショパンの曲以外を習っていました。

ベートーヴェンとか?

そう、モーツァルト、ハイドン、リストとか。

大きなベースを築いて、そこから自分の好きなもののピラミッドを作っていくことが大切だと思います。

今後もリチャードやダンタイソンに習いたいですか?

習いたいけどコンクール後はレッスンを受けられていないです。ちょっと心配。
演奏アプローチは少し変わるでしょう。もう毎週レッスンを受けている生徒じゃないから、インスピレーションの世界になると言えるでしょう。

以前にもまだ学び続けたいと言っていたと思います。コンクール優勝後はレッスンを受ける時間はないほどお忙しいと思いますが、今後は同じく世界で活躍する音楽家として師匠に学ぶことになるのかな。

今後の予定

全世界でコンサートやリサイタルの仕事の申し出があるでしょう?

もう2023年までスケジュールが埋まってます。

今年の夏のショパンフェスティバルでは何を演奏しますか?

まだ確定していませんが…プログラムはもう告知されているの?
たぶんサプライズにした方が良いかなと。でもあなたは絶対気にいると思いますよ。

ショパンだけではないですよね?

もちろんショパンもありますが、他もミックスされてます。

ソロリサイタル?オーケストラ?

たぶんどちらもだと思います。

すばらしい、いいニュースですね。

ブルースくんの情報を少しだけ教えてくれる感じがキュートで好きです。インタビュアーのAndrzej Sułekさんもすごい気になっていて質問してたけど、ブルースくんがうまく情報コントロールしてました。

いいなぁ夏のフェスティバル。ワルシャワ行きたいぃぃぃ。

趣味

他の趣味について教えてください

スポーツが好きです。テニス、水泳、カーティング。チェスも好きだし、読書や映画。
今は旅行が趣味みたいになってるけど旅行は趣味じゃない、旅は割と辛いです。

旅好きじゃないの?

前は好きでしたが、毎日旅するのは…。

チェスのプレーとピアノの演奏は何か似ている部分はありますか?

趣味はリラックスしてマインドセットを変えるためのものです。
24時間ずっと音楽というわけではないし、自分はそういう人間ではないです。
私にとっては常にインスピレーションが大切。

私は旅が好きだから世界中を旅できて羨ましいなと思っちゃいますが、バケーションじゃなくて仕事だし時差もあるからあちこち旅行するのは大変だよね。どうか体調管理だけ気をつけて健康に過ごしてほしいです。

インスピレーションという話がありましたが、ステージでピアノを弾く時に作品に対して理想のイメージは持っていない?

あります。漠然としたことをやったら崩壊しますから。
なので、自分のやりたいことに対してクリアな構成を頭に入れています。
90〜95%はそれが既にあって、残りの5%は即興している。インスピレーションとはその5%に関してです。

やっぱりピアニストはロジカルが必要そう。ブルースくんの5%のインスピレーションが大きな空気になって、聴いている人の心を動かすんだなと思いました。

今後の予定も気になる

ファツィオリとスタインウェイのピアノ、フォルテピアノに関してのお話を掘り下げて聞いてくれたのが興味深かったです。プログラムの組み方や選曲についても。

フォルテピアノを弾く予定は決まってるのかな。インタビュアーさんも気になっていたようだけど、情報小出しで気になります。ブルースくん情報操作が上手だね!

最後にこのワルシャワの後ベルリンに行って、ウィーンとロンドンも行きますみたいな話をしてインタビューが終了しました。

ロンドン公演のチャイコフスキーのコンチェルトは、BBCのラジオで明日の夜(日本時間は17日の明け方)に放送されるようです。

日本からも聴けるけどめっちゃ明け方。時差を考えると4時過ぎとか?私は夜型で寝たらアウトなんで、寝ずに朝を迎えるコースだわ!

Bruce Liu in conversation with Andrzej Sułek

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引きこもり中のゆるい推し生活を綴ります。スペインのセビージャでフラメンコ留学してました。趣味でピアノを習っていたのは4歳〜16歳くらいまで。素人です。話す言...

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