ブルース・リウ インタビュー Bruce Liu Interview with Ilya Takser

ピアニスト

先日IDAGIOのインタビューのことを書きましたが、同じような時期にもう一つインタビューがYouTubeに公開されました。

音楽家でありお友達でもあるらしいIlya Takserさんのブルース・リウ(Bruce Liu)くんへのインタビューです。

このインタビューとても面白かった!

昔から知っている仲のようなのでブルースくんもリラックスしていたみたいだし、Ilya Takserさんの意見も交えてディスカッション風になったり、プライベートな話もしたり…と話題が豊富でした。

ブルース・リウくんのインタビューを見ると、彼の人柄を垣間見ることができます。とてもフラットで客観的で、芯があって謙虚で、そしてユーモアがあってめちゃくちゃかっこいい人です。

内容を抜粋しつつ感じたことを書きます。詳細はYouTubeを見てみてね。(リンクは記事下に)

イントロダクション

とっても忙しいよね?

今月になってやっとコンクール後はじめて休めてる
優勝後のツアーで3キロ痩せたけど、モントリオールに戻ってきてから体重が戻った

やっぱり痩せたんだー。時差もあるし、激務だし、鍛える時間もないし、という感じでしょうか。体重戻ってよかったです…。

「好きなテーマから話し始めていいよ」とインタビュアーさんがテーマを伝えてました。

Competition
Teachers
Piano routine
Girls

最後にインタビュアーさんが「Girls」と言ったら笑っててかわいかった。それで「真面目な質問から答えた方がいいかな、みんなに悪い印象与えたくないから」とブルースくん。このやりとり微笑ましかった〜。

優勝が決まってから

優勝が決まった後の最初の朝のこと覚えてる?

とてもはっきり覚えている
2時間しか眠れなかった、そもそも結果発表が朝4時くらいだったし
それで終わりじゃなくてそこからプレス・カンファレンス
次の日から3日間柄コンサートだったので、ガラコンサートを終えることしか考えてなかった
3日間ともライブストリーミングがあったし、多くの人が見ていたのでコンクールよりも緊張した
7時とか8時に寝たけど12時にインタビューだったから2時間しか眠れなかった

じゃあソファに座って「俺はやった」と感じる時間はなかったんだね

それは今でもない

優勝が決まってからガラコンサートを終えるまでは怒涛って感じなんでしょうね。「やったー!」と思う暇もなく3日間のコンチェルトでクタクタになったと思ったら、ワールドツアー!みたいな。想像するだけで大変そうなスケジュールです。

なんか本当に休んでほしいし休みが必要とご本人も言ってたけど、どこまでスケジュール埋まってんのかな…。

日本や韓国でコンサートできたのはラッキーだった、今はロックダウンみたいになってできないから
全てが完璧なタイミングでできた

2月のガラコンサート、3月に予定されていた来日がなくなったのは本当に残念すぎてしばし言葉を失ったけど、11月に日本に来てくれたのは本当にラッキーでしたしありがとうでした。

数ヶ月ぶりに家から出たよブルースくんのコンサートのとき。忘れられない思い出です。

メディアも含め、この短期間でこんなにたくさんの人に会ったことが今までの人生でない
毎日数百のEメールを受け取っていて、全てが津波みたいだ

この後で言ってたけど、インスタでも数千のメッセージが来てるらしいです。ご本人もびっくりしただろうね…!

優勝した時3つのことが頭にあった
1. もうコンクールに出なくていい
これは幸せなことだった
2. 優勝した年齢が17〜18歳じゃなくてよかった
いろいろな準備できなかったと思うから、責任のあることがやってくる
3. 責任をキープすること
これからたくさんコンチェルトを弾くことになるし、5年先という長いスパンでレパートリーを考える

すごく冷静だなーと思ったのよね。ブルースくんはよくインタビューで「責任」と言ってる気がするけど、責任をプレッシャーに感じすぎないでねぇって陰ながら思ってます。

コンクールに出場する準備

コンクールに出る前、僕が今までの慣例的なものを弾かないから先生はちょっと恐れていた
そして演奏アプローチに関しても、僕はショパンの音楽にたくさんの幸福を求めた(表現した)けど、これは時に危険なことでもある
ショパンはノスタルジックで体が弱くて愛国心があって祖国を恋しく思っていてなど人々に固定観念があるけど、僕は自分の人生でそのようなことがないので、個人的なアプローチだった

今日はメディアの影響があって人々が似すぎた演奏をする、レールにハマっているような
それらからインスピレーションを受けるのはいいけど、自分自身の方法で演奏するということを、とてもクリアに頭に持っていた
先生たちは彼らはとてもオープンマインドだったので、僕に何かを強制することなく僕のアイデアを説得力のあるものにしてくれて感謝してる

ブルース・リウくんのお話を聞いていると、師匠にとても恵まれたんだな、師匠からすばらしいことを学んだんだなと感じます。同時に前のインタビューでも言ってた「自分自身であること」を軸としていて、それが彼の唯一無二の響く演奏につながるんだなと思いました。

現在のショパンコンクールの審査員はショパンの音楽を最もよく表現(演奏・解釈)した人を選んでいるのか、技術があって準備ができているオールラウンド的な演奏家を選んでいるか?

最近のショパンコンクールでは、私が間違っていなければ、ショパニストというよりも、よりコンプリートなピアニストを選んでいると思う
これは(過去の優勝者の)演奏スタイルから思った私の解釈です
ユリアンナやソンジンはコンプリートなピアニストで、ショパニストではない(という理解)

ただ、そもそもショパニストというのは言及が難しい、サブタイトルみたいな
私はショパニストをコンプリートな音楽家だとは言わないだろう
もし本当にショパニストなら何かしらの制限があることになり、コンプリートなピアニストのように弾かない
人生には常に犠牲があって、全てを上手にやることはできない

日本語にすると伝わりにくいかもしれませんが、とても謙虚な言い方をされていたように思います。そして「人生には常に犠牲がある」ってドキッとした表現でしたね。勉強になりますブルースさま。

私の個人的な意見ですが、ショパンの本来の音楽から離れてきてると思うのですが、ショパンコンクールは今後も19世紀の伝統(ショパンだけの曲を弾くコンクール)を継承すると思いますか?

それに関しては2つの話があり
音楽は再創造されると思う、それはある意味自然なことだから
なぜかというと私たちの生き方や社会生活が200年前と比べて変化しているから
ショパンが弾いたように私たちはその音楽を保持し続けようとしてるけど、食べ物、家、私たちは家プールあるし(!)カナダは雪降ってるし、とショパンの時代とは違うから同じテイストにならない

クラシックには最低限の規則があって、それは絵画とは異なる
例えば子供が10人いてりんごを書いたとしたら、確実に10人のりんごは違う
アジアの子供10人がショパンのエチュードを弾いたら、似ているようには絵画はならない
なぜか
クラシック音楽はレクリエーションされるべき

ここ難しい話で聞き取りpoorだったんですが(sorry)、前にもブラジルのインタビューでも「音楽は生活とリンクしている、生活が変わればそれに伴って音楽も変わります。」と言っていたので、それを想像しながら聴きました。英語わかるZE!って方いたらぜひ教えてください。

あと家にプールあるって言った時「we have」って言ってたけど、一般的なカナダの家庭にはプールがあるのか、それとも彼ら(ブルースくんとお友達)の家にはプールがあるという意味なのか…毎日泳いでるのは自宅のプールだったんですか!

パンデミックの時、コルトー、ミケランジェリ、シャンソン・フランソワなどの演奏を聴いて、フレージングやペダル、即興的な面をたくさん学んだ
彼らはテクニックはなかったけど、そんなの気にしてなかった、それは重要ではなかった

コンクールの影響

人々はあなたに対して今は(コンクール前と)違うでしょう?例えばいいホテルを用意してくれたり、どのようにそれらをハンドリングしてますか?

もちろん楽しんでますが、やりすぎないようにというか落ち着いた状態を保ってる
なぜなら正直僕は変わっていなくて、僕は僕のままだから
優勝によって人々は急に僕に価値があるように思うかもしれないけど優勝はタイトルでしかなく、僕のことを知ってる人、先生や両親にとっては僕の価値は10年前から変わっていない
急に僕が神になったわけではないから
もちろん賞賛をもらったりファンがいること、より多くの人に幸せを届けられるのは嬉しいし、彼らからインスピレーションを得ることもある
自分自身の道をキープしてる

あぁかっけー。もう本当にブルース・リウくんを表す言葉は「Be myself」なんですね!地に足が付いている感じで素敵ですねー。本当見習いたい。

他のコンクールにも出ているけど、今回何か変わった?

各イベント(コンクール)の後でいろいろなことを考えるけど、最も大切なことはどうやって自分(の可能性)を広げるか
ショパンコンクールの前は完全にブッダみたいで、平和な気持ちで結果のことは考えなかった
各予選が終わった時にはスーツケースの準備をして、もし落選したら出発できるようにしていた
何が起こっても大丈夫な心持ちで

コンクールで学んだことは、期待しないで、自分がやることの細部にフォーカスする
大きなイベントでは他の出場者やメディアの影響を受けやすくなるから、自分自身に集中すること

予選が終わった時にスーツケースの準備をしていたなんて!3次予選の時もファイナルに行けなかった時のために記念写真を撮ったインスタあげてたけど、まさか出発の準備までしていたとは知りませんでした。

たくさんのコンクールに出場して、集中の仕方や心の持ちようをとても学ばれたのですね。ブッダみたいな平和な気持ちを持てるってすごいなぁ。達観してるなぁ。

先生について

リチャード・レイモンドとダンタイソンについて

リチャード先生は君の方がよく知ってると思ってるけど、いつもシェープで彼はフォーメーションが安定していて、フレージング、ペダル、不快な音を出さない体の使い方など学んだ

リチャード先生の逸話でグラスの話をしていたけど聞き取れなかった〜。

リチャード先生が言ったことの90〜95%をすぐに実現できたという話は本当?

習い始めた当時はまっさらな状態だったので吸収が早かった
もし私が今ロシアに行ってロシアの先生に習ったとしたら、14歳の頃のように簡単にはできないだろう、
自分なりのアイデアやパーソナリティもあるし

どこかのインタビューで見たけど、ブルースくんは教えたらすぐできるみたいな生徒だったようですね。当時はまっさらだったからと謙遜されてたけど、子供時代どんなだったのかも詳しく聞いてみたい。

ダンタイソン先生とは、初めはショパンは全く学んでいなかった
彼のところにはショパンを習いに来る人が多いから変わってるんだけど、ショパン以外を習っていて、2年前になぜショパンを(この人に)習わないんだろうと思って

ダンタイソン先生はとてもフレキシブルで、習い始めた時に私のパーソナリティが育ってきていたんだけど、彼は僕に強いることはせず常に僕のベストな道を探してくれた
僕のアイデアをプロとして説得力のあるものにしてくれたけど、僕のマインドを変えることはしなかった

ダンタイソン先生は素晴らしい音楽家なだけでなく、素晴らしい師匠なのだろうなと、ブルースくんの話を聞くと本当にそう思います。「ショパンに愛されたピアニスト」て本、マジでKindle化してほしい。

おすすめ記事 ▷ 読書感想文|ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語

リチャードとダンタイソンとどっちが面白い人ですか?

彼らのユーモアセンスは異なるのでどっちと言うのは難しいけど、でも彼らには似ている部分もあって、たまに大人と話していないと感じることがある
彼らはとてもナイーヴで、無邪気さはアーティストに必要だから、自然な部分が出てくるのは素晴らしいことだと思う

無邪気で純粋な先生たち。ブルースくんもそうなんじゃないかなと想像してみたりしますが、どうでしょ?

ブランドとのコラボ

あなたはファッションが好きですよね?

きちんとした服を着るようにしています。アーティスティックな面の一つだと思うから。

ブルース・リウくんはおしゃれで、いつも素敵に着こなしていてシュッとしているイメージ。

「牡牛座なので」って言っていた気がするんだけど気のせいかな?牡牛座さんは美意識が高く、おしゃれだったり美食家だったりするからね♪

ブランドとコラボする予定はある?

まだないけど、たぶんそのうちするんじゃないかな

なんかもしかしてコラボ決まってるの!?って思いましたけど!ポスターの時計の話にもなったけど、どこかのハイブランドのモデルになったりして!スタイルいいしかっこいいからモデル似合いそう。

ピアノのブランドとのコラボは?

ファツィオリが最もありそうなケースだけど、今のところはない

で、この後聞き取れなかったのだけど、たぶん自分の家のピアノを変える予定はある?みたいな話?で、このインタビューを聞いてる誰かが僕にプレゼントしてくれるはず笑って言ってました。

自分のピアノを世界に持ち歩くつもりはある?

今のところその考えはない、まず予算的に無理だし
異なるガールフレンドが各地にいるみたいな感じで、異なるピアノを弾くのを楽しんでる
ピアノに慣れることが楽しい、自然発生的だし即興的
ホールの音響に合わせたピアノがチョイスされていることも多い

この話いいよねぇ。ピアノは各地にいるガールフレンド。で、そのガールフレンドにとても優しいブルースくん。実際のガールフレンドが各地にいるかどうかはこの後。

ゲルギエフとの共演はどうだった?

コンクールよりも緊張した
ゲルギエフは宇宙一忙しい指揮者だしオーケストラも忙しくて、リハーサルの時間がなくて10分話す時間があった
演奏の時は即興性があって、もちろんリスクもあるけど楽しかった

2021年末のサンクトペテルブルクでのコンサート。配信はなかったけど(涙)きっと素晴らしいコンサートだったんだろうなと想像して楽しんでおきます。あぁ見たかったぞー。

ガールフレンド・彼女♡

ファンから不適切なメッセージをもらったことはある?

不適切とはどういった意味で?笑
たぶんもらったことはあるけど、最も不適切なものはまだ見てないと思う
メッセージ来すぎてるからたくさんのメッセージ読んでない
たまに有名な指揮者さんからのメッセージとか重要なものを飛ばしちゃってることもあって申し訳ない

不適切なメッセージ(だいたいみんな想像ついたと思うけど)はたくさん来てるだろうと思いますが、読んでないみたいでよかったです。あっけらかんとしていて、なんかどっしり構えていていいなぁと思いました。

真剣なお付き合いは探していますか?

常にそういう人は探してる
ソウルメイトでサポートしてくれて理解してくれる人
でもたぶん今はずっと旅してるし難しい

インスタライブなどでたびたび「I’m single」と言ってるブルースくん。素直そうな人に見えるし、いたら「支えてくれてる彼女がいます」ってストレートに言いそうだから、本当に彼女はいないのかなと思ってますが。

たぶんスーパーモテる人だと思うし、今はよりおモテになる状況だろうけど、じっくり自分に合う人を選びそうな感じに見えます。勝手な想像だけど。素敵なソウルメイトに出会いそう♪

Be myself.

最後にカナダでのコンサートのことと、今後チャイコフスキーのコンチェルトを弾く予定がある話をしてインタビューは終わりました。

1時間たっぷりのインタビューで面白かった!インタビュアーさんがアジェンダや質問を細かく用意していたので、情報が整理されていて聞きやすかったです。

それとブルース・リウくんは賢くて話の組み立て方が上手でした。3つあります、2つありますって最初に伝えてくれるから、話が入ってきやすい。

「Be myself=自分自身であること」

本当に心にくるなぁ。今はなおさら。

ブルースくんのインタビュー聞くと彼の素敵な人柄を切に感じて、魅力にやられそうです。っていうかやられてます。みんなそうでしょきっと!

Bruce Liu on: Music, Teachers, Winning strategies and Serious relationships

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引きこもり中のゆるい推し生活を綴ります。スペインのセビージャでフラメンコ留学してました。趣味でピアノを習っていたのは4歳〜16歳くらいまで。素人です。話す言...

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