ショパンコンクール2021

ショパンコンクール2021:2次予選4日目の印象に残った曲と感想

2021年第18回ショパンコンクールの2次予選は、全ての演奏をリアタイで見ると決めています。

いよいよ2次予選も最終日。最終日は日本人が2人出演。地元ポーランド勢もいてまたしても濃いセッションでした。

2次予選4日目に出場者たちが弾いた曲の中で、各ピアニストについて1曲ずつ印象に残った曲と感想を書いていこうと思います。完全なる私の好みです。

なお、私は昔ピアノを習っていただけの素人で、今は聴く専門で楽しんでます。

10月12日 Morning Session 前半

今日で2次予選は最後かと思うと寂しいような気もします。

Wei-Ting Hsieh(ウェイティン・シエ)
スケルツォ第1番 / Scherzo in B minor, Op.20

Adam Kaldunski(アダム・カウドゥニスキ)
舟歌 / Barcarolle in F sharp major, Op.60

Nikolay Khozyainov(ニコライ・ホジャイノフ)
英雄ポロネーズ / Polonaise in A flat major, Op.53
ワルツ第9番(告別) / Waltz in A flat major, [Op.69 No.1] WN4

Wei-Ting Hsieh(台湾)
スタインウェイ 479
美しい音から始まった「スケルツォ第1番」。スケルツォの独特な(と私が思ってる)乾いた音が心地良かったです。
屈託ない素直な音で演奏する方だと思いました。
後のワルツ第2番やアンダンテ・スピアナートは、嫌味のない音の運びと、フォルテの高音の響きが美しかったです。

Adam Kaldunski(ポーランド)
スタインウェイ 479
2019年ベルリンのコンクール1位、2020年ワルシャワのコンクール2位で予備予選免除の地元ポーランドのピアニスト。
モヤがかかったような憂いある音色が絶品でした。澄んでる音だけが美しいのではないと気付かせてくれた音の魅力。
アダムさんの音色の心地よさを感じた「舟歌」。モヤがかかった音は朝日の中で船が漕ぎ出していく様を表すようで、気持ち良すぎました。舟歌のメモには「絶品料理を堪能しましたの巻」と書いてある。

Nikolay Khozyainov(ロシア)
スタインウェイ 479
最初の「英雄ポロネーズ」の出だしがとってもソフトで、かなり驚きがあったニコライさん。朝起きたてのようなかなり変わった英雄ポロネーズで目が離せず。徐々に盛り上げてラストは気高い!
次に弾いた「ワルツ第9番(告別)」の悲しい響きが美しく、リズムの取り方が好きでした。続けて入ったワルツ第4番(子猫のワルツ)も空気が継続されて良かったです。
ショパンてこんな曲も作っていたのねと思った「フーガ」など、独特のプログラムもおもしろかったです。最後の「舟歌」はラストで情感たっぷりなドラマティックな展開を見せてくれて、壮大な世界に連れて行ってくれるようでした。朝起きたてのポロネーズから、世界の広がりを見せる舟歌へ。ニコライさんワールドに引き込まれました。
落ち着いて自分の音楽を表現するかなり個性的な弾き方で、なかなか衝撃的なお方でした。

午前前半の感想

地元出身のAdam Kaldunskiは緊張していたのか、最初の方はミスタッチが割と多く調子が出ていないようでしたが、後半持ち直しました。ポーランドの聴衆の前で演奏する大変なプレッシャーがあったのでしょうか。ミスタッチがあっても、モヤのかかったような憂いある音は終始素敵でした。

Nikolay Khozyainovの独自ワールドがかなり衝撃でした。聴けば聴くほどNikolay Khozyainovの英雄ポロネーズがクセになりそう。私は長いことピアノから離れているので、英雄ポロネーズの楽譜をもう一度見たいと思った次第です。

10月12日 Morning Session 後半

鬼ハイレベルな回。3人とも同じスタインウェイ 479を使っていたので、楽器の違いがないという興味深さもありました。

Su Yeon Kim(キム・スーヨン)
即興曲第1番 / Impromptu in A flat major, Op.29
ポロネーズ第5番 / Polonaise in F sharp minor, Op.44

Aimi Kobayashi 小林愛実
幻想ポロネーズ / Polonaise-Fantasy in A flat major, Op.61
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ / Andante spianato and Polonaise in E flat major, Op.22

Mateusz Krzyżowski(マテウス・クシュゾフスキ)
バラード第1番 / Ballade in G minor, Op.23
ワルツ第2番 / Waltz in A flat major, Op.34 No.1

Su Yeon Kim(韓国)
スタインウェイ 479
1次予選で抜群に上手だった韓国のピアニスト。
たっぷり聴かせるバラード3番から始まり安定感は顕在。とにかく上手だと思いました。そして、ホールで響く華やかな音で、品があります。
「即興曲第1番」のロマンティックな演奏が好きでした。一転して「ポロネーズ第5番」では、特に後半以降でスタミナを失わない力強さがありました。

小林愛実(日本)
スタインウェイ 479
いやぁすごかった小林愛実さん!表現力にため息しか出ません。
「幻想ポロネーズ」の最初の一音から「なんだこれは!」と思うものがありました。弱音ってこんなに柔らかく美しく出せるんですね!音にかける集中力をすごく感じて、出てくる多彩な表現力に脱帽でした。
「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」で見せてくれたのは、豊かな表現力から出る抑揚、妖艶で品があり芯の強さ感じる音、音楽の深み...全てが壮大で圧巻と呼ぶのにふさわしい完成度でした。
1次予選では椅子のトラブルがあったので集中できなかったとご本人はおっしゃっていましたが、今回は集中できて全身全霊傾けることができたのではないでしょうか。終わった後に「疲れたからおいしいものを食べたい」と言っていた庶民的なお姿がかわいかったです。
YouTubeで小林愛実さんの演奏をよく見ていますが、私的には歴史に残る名演でした。
会場で起こった拍手は長い間鳴り止まなかったようです。

Mateusz Krzyżowski(ポーランド)
スタインウェイ 479
地元ポーランドのピアニスト。小林さんの拍手喝采の後でも気にせずマイスペース。
あまり表情変えないで弾くのだけど(公式が挙げてたインスタの写真たちもほとんど無表情)、渋いノクターン、しっとりしたバラードと演奏は色彩があって素敵でした。
「ワルツ第2番」を聴いて、ポーランドの人のワルツの独特の揺れは素敵だなと思いました。やっぱり遺伝子なのかな。独特のスイングがあって、華やかで艶やかです。
最後の「英雄ポロネーズ」を聴いて、やっぱりポーランドの血って音楽に影響するなと思いました。英雄ポロネーズって溜めて弾くイメージがありましたが、溜めるのではなく遺伝子的に刻まれてるポーランドの血による独特な揺れなのではないかなと。
華やかさだけでなく、鬱や憂いなどショパンのいろいろな面を見せてくれるようなプログラムが魅力的でした。

午前後半の感想

白熱の戦いが繰り広げられたセッションです。技術力ある優等生キムさん、情熱と表現力の小林さん、遺伝子光るマテウスさんというイメージでした。

3人とも緊張していなさそうだったのも印象的。もちろん緊張はしていたのだろうけど、大舞台でもそう見えないプロ魂はさすがです。

かなり聴き応えあっておもしろかった!お風呂入ってイブニングセッションに備えます。

10月12日 Evening Session 前半

いよいよ最後のセッションの前半。日本人の京増修史さんが出演しました。

Jakub Kuszlik(ヤコブ・コシュリク)
ワルツ Op.34 / Waltz in A flat major, Op.34
ポロネーズ第5番 / Polonaise in F sharp minor, Op.44

Shushi Kyomasu 京増修史
舟歌 / Barcarolle in F sharp major, Op.60
ノクターン第8番 / Nocturne in D flat major, Op.27 No.2

Hyuk Lee(イ・ヒョク)
英雄ポロネーズ / Polonaise in A flat major, Op.53

Jakub Kuszlik(ポーランド)
スタインウェイ 479
地元ポーランドのピアニスト。
「ワルツ第2番」から始まりましたが、リズムが心地よく、星が光るような表現、センスが良い音の運び。またもやポーランドの血を感じることができました。
ワルツ3曲ともよかったです。このスイング感やっぱ独特。ずっと聴いていたくなるようなリズムと音です。
正統派な「ポロネーズ第5番」は、父親のような安心感と厚みがありました。ふくよかな指で奏でる優しい音。演奏の合間に髪をかきあげる余裕もあり。包容力のある音楽が好きでした。
ジャケットの袖が長い気がしました。もう少し短い方が弾きやすいのではないかと。

京増修史(日本)
YAMAHA CFX
2次予選最後の日本人出演者となった京増さん。
丁寧に音を探しながら弾く感じで、とっても優しい音が魅力的でした。謙虚な感じの振る舞いにも美しさが見えました。
「舟歌」ではそんな優しい音が気持ちいい揺れに乗っかって、思わず目を閉じて聴きたくなるような心地よさでした。
「ノクターン第8番」は憂いある演奏が素敵。優しい音の中には繊細さと物悲しさが含まれており、すごく京増さんの雰囲気に合っていたノクターンでした。音楽に没頭させてくれるような音色です。
ピアノと対話するような弾き方とまっすぐな表現に、心をギュッと掴まれました。

Hyuk Lee(韓国)
SHIGERU KAWAI
韓国の若きピアニスト。
よく鳴るカワイの音は最初に弾いた「スケルツォ第3番」によく合っていて、出だしで惹きつけられました。突進力があるような演奏。途中の静寂部分で携帯電話が鳴り集中力きれないか心配しましたが、動じず弾き続けました。
ですが、ソナタの途中でまた携帯電話の音が...。さすがにこれはお客さんひどい。そしてソナタが終わったら今度は会場から拍手が。おっとこれは集中力切れちゃうかもとハラハラ。しかもまだ1曲残っていて時間押し気味という逼迫した状況。
そんなドキハラ満載な中で拍手の後に弾いた「英雄ポロネーズ」が一番印象に残ってます。速めだったけどきっと焦っていたのではない。動じない姿勢と度胸で弾き切った魂にオレー!

午後前半の感想

携帯のマナーはどうにかしてほしい。それでも集中するのがアーティストだと言うなら従うしかないのかもしれないけど、見てる方だって集中力途切れるんだから演奏している人のこと考えたら気の毒すぎます。

劇場に入る時に携帯は全て没収すればいいのに。時間を確認したい人は腕時計をしてくればいい。

集中して演奏できる環境づくりを考えてほしいと思ったけど、ヨーロッパの方は携帯の音には結構寛容だよね。

10月12日 Evening Session 後半

いよいよ最後の回。2人目のMarcin Wieczorekさんが健康上の理由で棄権されました。とても残念ですが、どうかお大事になさってほしいです。

Bruce (Xiaoyu) Liu(ブルース・シャオユー・リュー)
マズルカ風ロンド / Rondo à la mazur in F major, Op.5
ワルツ第5番 / Waltz in A flat major, Op.42
アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ / Andante spianato and Polonaise in E flat major, Op.22

Bruce (Xiaoyu) Liu(カナダ)
Fazioli F278
1次予選見ていなかったのですが、「マズルカ風ロンド」弾き始めてびっくり。上手い、上手い〜。音の粒がはっきりしていて連打の美しいこと。音の強弱で惹きつけます。すごいぞこれは。
「バラード第2番」では低音の重厚感があるFazioliのピアノを、ドラマティックに弾いていました。
期待値上がった状態で聴いた「ワルツ第5番」は楽しくなる多彩な表現。テクニックも抜群なのだと思いますが、抑揚やリズム感に遊びがあって、とっても魅力的な弾き方をする方でした。かなり好きです!
「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」を聴いてびっくり。こんなにドラマティックにこの曲を弾く人がいたなんて!鳥が歌うような演奏で、華やかでおもしろみがあって、ダイナミックさもあって、すっかり彼の虜になりました。
軽快な曲で出すリズム感が絶妙で、癖なのか彼の足も浮いて踊っているようでした。抑揚のセンスが抜群です。重ための曲も聴いてみたい。いやぁこれは魅せてくれました!
お客さんの拍手もかなり長かったので、会場も湧いたのではないでしょうか。もはや1曲を選べなくて3曲になってます。

ドラマティック演奏に躍るブルース・リウ(Bruce Liu)のピアノ

第18回ショパンコンクールで見て、表現が好きだったピアニストその3。 パリ生まれカナダ国籍のBruce (Xiaoyu) Liu(ブルース・シャオユー・リウ)さんです。年齢は24歳。 1次予選は深夜帯 ...

2次予選4日目を聴き終えて

2次予選本当にレベルが高いですね。

私は点数をつけているわけでもなく順位をつけているわけでもなく、単純に「この人好きだな!」「この演奏のここが好きだな♪」という視点でしか見ていませんが、この中から3次予選に出場する人を20人に絞らなければいけないのは大変な作業だと思います。

でもあと1時間以内には2次予選通過者が発表されるという状況。気になるので、寝ないでがんばってます。

  • この記事を書いた人

moni

引きこもり中のゆるい推し生活を綴ります。素人です。もう一つのブログにスペインのこと綴り中。スペインのセビージャでフラメンコ留学してました。趣味でピアノを習っていたのは4歳〜16歳くらいまで。話す言語は日本語とスペイン語。英語話せるようになりたくて勉強中。
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▶︎急がば回れ!moniとスペイン

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