ショパンコンクール2021:3次予選1日目の印象に残った曲と感想

コンクール

2021年第18回ショパンコンクールの3次予選も全てリアタイで見られるかな?2次予選を全てリアタイで見たおかげで昼夜逆転して、すこぶる寝不足になってます。

3次予選初日を見終わりました。もう3次予選になると素人にはわからない世界になってきます。

2次予選の感想と同じく、3次予選で出場者たちが弾いた曲の中で、各ピアニストについて1曲ずつ印象に残った曲と感想を書きます。

私は昔ピアノを習っていただけの素人で、今は聴く専門で楽しんでます。この感想は誰がファイナルに出場するかを予想するものではなく、完全なる私の好みを書いています。

10月14日 Morning Session 前半

前回ファイナリストで予備予選免除でもあるシモン・ネーリングと、同じく予備予選免除のカミル・パホレツのポーランド人競演です。

Szymon Nehring(シモン・ネーリング)
マズルカ作品56 / Mazurkas, Op.56

Kamil Pacholec(カミル・パホレツ)
ロンド / Rondo in E flat major, Op.16

Szymon Nehring
(ポーランド)
スタインウェイ 479
おぼろ月が見えるような「ノクターン第18番」は夜に聴きたいなぁと思いました。ポーランドは朝だろうけど、体も硬い午前の出場者はちょっと不利な気もします。
シモン氏は品があって美しい演奏のイメージ。歌うマズルカは気品あふれ、体から自然に出るリズムのよう。華やかで品があるだけでなく哀愁や陰の部分も感じました。ドラマ性のあるような演奏が魅力的です。
3次予選になるとトップバッターからコンサートみたいで聴きごたえあります。演奏順はもう運としか言いようがないですね。

Kamil Pacholec(ポーランド)
スタインウェイ 479
1次予選は10-4で不調だったイメージがあって(ごめんなさい)、2次予選は地味だったのであまり印象がなく(ごめんなさい)、3次予選で印象がガラリと変わりました。さすが3次予選ともなると上手でした。
柔らかい音で「ロンド」の絶妙なリズム、サラッと弾くマズルカが心地よかったり。プログラム全体を通して最後に向けて盛り上げた感じで、「ソナタ第3番」は安定感がありました。
前に弾いたシモン氏に比べてペダルを踏みかえない感じがしたけど、そういうものなのかな?
インパクトはないけど手堅い印象です。もともと大人しくて職人風の方に見えました。

10月14日 Morning Session 後半

17歳のハオ・ラオくんと、19歳の進藤実優さん。若者同志の競演です。

Hao Rao(ハオ・ラオ)
英雄ポロネーズ / Polonaise in A flat major, Op.53

Miyu Shindo 進藤実優
マズルカ風ロンド / Rondo à la mazur in F major, Op.5

Hao Rao(中国)

スタインウェイ 479
17歳とは思えない音を紡ぎ出す方。「子守歌」の抜群にきれいな音からスタートして、17歳の母のような演奏に癒されるとは思っていませんでした。
心が澄み渡ったような「ソナタ第3番」第1楽章の入りが印象的。一つ一つの音を大切に出すので、優しい音、太い音の表現力がとてもありました。
最後に弾いた「英雄ポロネーズ」の堂々たる感じ!しっかり重たいポロネーズ。途中で小節を結構飛ばしたと思うけど、それを上回る素晴らしさでした。客席にもその熱は伝わった様子!

進藤実優
(日本)
スタインウェイ 479
2次予選の情感たっぷりな表現を見て、とても19歳とは思えなかった進藤実優さん。
これは完全な私の好みですが、進藤実優さんの演奏は跳ねるような動きがある曲が好きなんですよね。3次予選では「マズルカ風ロンド」が好きでした。2次予選で好きだったのはワルツ第5番。
彼女の繊細で軽快なタッチが曲に合っている気がして好きなんだと思う。軽やかな曲の中に彼女の情感たっぷりな弾き方がところどころ出てくると、その抑揚が素敵です。
男性、女性で区別するのは好きではないけど、女性らしい柔らかい音色も彼女の魅力だと思います。

10月14日 Evening Session 前半

反田恭平さんと角野隼斗さんが登場。2人の日本人競演の回です。YouTube視聴者数が一時4万を超えていて!注目度の高さが伺えました。

Kyohei Sorita 反田恭平
ソナタ第2番 / Sonata in B flat minor, Op.35
ラルゴ / Largo in E flat major ‘Boże, coś Polskę’ (harmonization of the old version of the song for piano), Op. posth.

Hayato Sumino 角野隼斗
スケルツォ第3番 / Scherzo in C sharp minor, Op.39

反田恭平(日本)

スタインウェイ 479
2次予選はリサイタルみたいで会場の空気を自分のものにしているなと思いましたが、3次予選もそうでした。
迫力、安定、悲しさ、力強さのすばらしい「ソナタ第2番」から、後の希望が見えるような「ラルゴ」の流れが秀逸でした。そこからのこれまた堂々たる「英雄ポロネーズ」で、全体を通して物語を描いているような構成。コンクールということを忘れて見入ってしまいました。
演奏後のインタビューでご本人は「やりたいことができなかった」とおっしゃってましたが、まさか!あの演奏でそんなことがあり得るの?いやいやすばらしかったです!
でもご本人がそう思うならそうなのだろう。芸術家とは満足することはきっと一生ない(いつだって自分の演奏に課題が出る)と思うので、苦しいものです。

角野隼斗(日本)

スタインウェイ 300
2次予選はとても緊張されていたように思いましたが、3次予選の方が緊張が解けたのか自由に弾いていた印象です。1次予選、2次予選、3次予選のいずれも拝見して、3次予選が一番好きでした。
結構盛りだくさんなプログラムで時間足りるのかソワソワしちゃいましたが、きっちりおさめた感じ?さすがです。
2次予選は動きのある「マズルカ風ロンド」が心地よかったけど、3次予選では時々矢を射抜くようなシュッとした音が魅力的だった「スケルツォ第3番」が好きでした。最後にスケルツォを弾いたのもよかった!
1次予選の時から、目の前の音に真摯に向き合う感じがとても素敵だなと思っています。

10月14日 Evening Session 後半

初日最終組もポーランド人2人の競演でした。この回はすごかった!ポーランド勢の実力をひしひしと感じました。深夜まで起きていてよかった。

Andrzej Wierciński(アンジェイ・ヴェルチンスキ)
マズルカ作品24 / Mazurkas, Op.24
スケルツォ第4番 / Scherzo in E major, Op.54
ソナタ第3番 / Sonata in B minor, Op.58

Piotr Alexewicz (ピオトル・アレクセヴィチ)
24の前奏曲 / Preludes, Op.28

Andrzej Wierciński(ポーランド)

スタインウェイ 300
ポーランドの遺伝子がずっと気になってる方で注目してました。3次予選ではさらに見せてくれましたよポーランドの血!
好きだった曲に全てを選んでしまったのですが、素直に「やられた〜!」と思うステージでした。
圧巻は最初に弾いた「マズルカ作品24」です。独特の揺れリズムやっぱりきた!弾むリズムの妙は舞踊の様子が目に浮かぶようです。これは練習して出るものじゃない気がする。とても自然に彼の中にこのリズムが最初からあるような感じ。しっとりしたこのマズルカで、初日に聴いた中では抜群に好きでした。ポーランドの見事な絶品料理を堪能。
アンジェイ氏はポーランド人の中ではウェットに弾く人のイメージがあります。感情を曲に込めるタイプなのかな。感情が乗ったようなドラマティックな「スケルツォ第4番」の美しさ。
「ソナタ第3番」はしっとりめで、しみ入るような憂いの表現。包み込まれるような優しさ。最後ミスタッチが目立ったけど、ここまでポーランド魂が見られたらそんなの気にならないでしょう。
っていうか2次予選までもう少しクールだったじゃん。なになに隠してたの?客席「ブラボー」ご本人もやりきった表情に見えました。

おすすめ記事 ▷ ポーランドの遺伝子感じるAndrzej Wiercińskiのピアノ

Piotr Alexewicz(ポーランド)

スタインウェイ 479
まだ21歳だけど動じない安定感があって、攻める正統派なイメージのピオトルくん。
マズルカは高尚な響き。さすがのポーランドやな、21歳でこの哀愁漂う感じ出せるのすごいな。最終組はマズルカが秀でていたと感じました。
「24の前奏曲」すばらしかった。曲ごとにカラーを変える多彩な表現は料理の鉄人みたいでした。「太田胃散 ありがとう いいくすりです」をあんなに素敵に弾く人がいたなんて!ものすごく堂々していて、とにかく攻めのプレリュードに見えます。たまに雑になるけど、しかめっつらで弾くアグレッシブな感じがいいっすね!大聖堂の鐘の音のような迫力あるラストが印象的。
客席「ブラボー」ポーランドの実力を感じさせる最後の1人でした。

なお、今までずっと「太田胃酸」だと思っていましたが、正しくは「太田胃散」です。酸→散。

胃酸:胃液中に含まれる酸
胃散:胃病に使う散薬

言われてみれば…!

3次予選1日目を聴き終えて

初日は最初と最後の回がポーランド人2人で、間に日本とアジア勢の4人というサンドイッチ構造でした。ポーランド人2人を続けて聴くのはなかなか興味深いです。

素直な感想は、ポーランド勢の層が厚い。特にさらりと弾くマズルカはにくいです。

PCで見ているので、ちょっと疲れが溜まってきました。でもこの生活だんだん慣れてきた。

1人45〜55分の持ち時間とかなり長いので、弾いている出場者の方々は疲労困憊だと思います。

あと数時間後に2日目のセッションが始まります。今日もさ〜濃いから夜中まで寝られないんだよ。

moni

引きこもり中のゆるい推し生活を綴ります。スペインのセビージャでフラメンコ留学してました。趣味でピアノを習っていたのは4歳〜16歳くらいまで。素人です。話す言...

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