第18回ショパンコンクール2021 私の総括

コンクール

あぁもう2021年開催の第18回ショパンコンクールが終わってしまいました。

取り憑かれたように2次予選、3次予選、ファイナル、ガラコンサートを全てリアタイで見て、本当に充実した10月を過ごすことができました。

自分なりの総括をまとめておきたいと思います。

第18回ショパンコンクールの結果

まずは2021年第18回ショパンコンクールの結果から。

1位
Bruce (Xiaoyu) Liu(カナダ)

2位
Alexander Gadjiev(イタリア/スロベニア)ソナタ賞
Kyohei Sorita(日本)

3位
Martín García García(スペイン)コンチェルト賞

4位
Aimi Kobayashi(日本)
Jakub Kuszlik(ポーランド)マズルカ賞

5位
Leonora Armellini(イタリア)

6位
J J Jun Li Bui(カナダ)

結果発表の時に、1位だったBruce (Xiaoyu) Liu(ブルース・シャオユー・リウ)さんは後ろの方に隠れていて、名前を呼ばれた時も信じられないという感じの反応だったのが印象的でした。インタビューを見ても、ブルースくんはとても謙虚な方ですよね。

発表のアナウンスがポーランド語でスタスタされてしまったため、2位の反田恭平さんも「え、俺?」と驚いてました。何位の発表してるのか、私は全くわからないままの進行だったけど、現場のコンテスタントさんたちも混乱していたのかも。

ファイナル3日目をリアタイで見た後、5時間くらい待ってからの結果発表だったのでそろそろ眠気がなんて思っていたのに、ファイナルの結果が出たら興奮で眠れなくなってしまいました。

アーカイブを見てまた興奮したりして、結局寝たのが11時過ぎだったかな。3時間ほどしか眠れず。

こちらの記事で書いた通り、ファイナルの最後の2人が自分にとってかなり強烈な印象の演奏だったので、結果待ちがなくてもなかなか寝られなかったと思います。

おすすめ記事 ▷ ショパンコンクール2021ファイナルで強烈だった2人

その他の賞

ショパンコンクールには入賞やソナタ賞などの最優秀演奏賞とは別に、エクストラの賞があります。

Prize for the youngest finalist in the Competition(最も若いファイナリスト賞)
J J Jun Li Bui(カナダ)

Prof. Zbigniew Drzewiecki Award for the highest rated participant representing Poland who did not qualify for the final(決勝に出場できなかったポーランドを代表する最優秀賞)
Piotr Alexewicz(ポーランド)

The Henryk Rewkiewicz Prize for the highly-rated pianist representing Poland, Belarus, Israel, Lithuania, Ukraine or Russia(ポーランド、ベラルーシ、イスラエル、リトアニア、ウクライナ、ロシアの中の最優秀ピアニスト)
Jakub Kuszlik(ポーランド)

Mayor of Hamamatsu City Prize for the First Prize Winner(浜松市長賞)
Bruce (Xiaoyu) Liu(カナダ)

Special Prize for the highest rated pianist representing Poland(2つの機関からの最優秀ピアニスト賞それぞれ)
(Animato’ Association in Paris)(Elzbieta and Krzysztof Krawczynski Foundation and Halina and Aleksander Szlam Foundation)
Jakub Kuszlik(ポーランド)

Chopin Society of Atlanta Award for the highest rated Polish pianist(ショパンアトランタ協会賞)
Jakub Kuszlik(ポーランド)

Prize for the youngest female finalist in the Competition(最も若い女性ファイナリスト賞)
Eva Gevorgyan(ロシア)

ガラコンサート2日目の演奏前に表彰式がありましたが、Jakub Kuszlik(ヤコブ・クシュリク)さんの総なめ感があり何度も舞台に登場されていました。あまりにも何度も名前を呼ばれるので、ヤコブさんは最後の方が苦笑いだったのが印象的。

好きだった演奏

ショパンコンクールの配信を通して、たくさんのピアニストさんのたくさんの音楽に出会うことができて幸せでした。

2021年第18回ショパンコンクールの1次予選以降&ファイナルの中で、私が好きだった演奏を書いてみます。(おすすめ記事 ▷リンク先は公式のYouTube動画)

部門は勝手に作ってます。各部門1名と思ってまとめ始めたのですが、どうしても1名に絞れなかった部門は2名(演奏順で記載)になっています。

ポロネーズ

Yutong Sun(ソン・ユトン)
2次予選 ポロネーズ第5番
Polonaise in F sharp minor, Op.44

度肝を抜かれた中国のソン・ユトンさんの「ポロネーズ第5番」。これはすごかった。私と同様に彼のポロネーズにハマってしまった人は多いのではないでしょうか。

切なく苦しい音色や、深く濃密で黒いものが見えてゾクゾクしたポロネーズ、たまらない。怖いと思うほどのとてつもない魅力がありました。

ポロネーズ第5番を弾いた方は結構いらっしゃいましたが、ユトンさんのポロネーズの印象がとにかく強くて、あの濃密な黒さに触れたくて毎日リピートしています。

YouTube ▶︎ YUTONG SUN – second round (18th Chopin Competition, Warsaw) -Chopin Institute

アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ

Bruce (Xiaoyu) Liu(ブルース・シャオユー・リウ)
2次予選 アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ
Andante spianato and Polonaise in E flat major, Op. 22

「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」を弾いた人は多かったですが、その中で最もお気に入りだったのが、めちゃくちゃ心奪われたブルース・シャオユー・リウさんのアンダンテ・スピアナート。

なんてドラマティックに演奏する人なんだろうと思って、強烈に印象に残ってます。遊ぶリズムや跳ねる音がとにかく素敵!緩急のセンスが抜群に好きで、何度見ても心が掻き立てられるような、ワクワク躍る演奏です。

YouTube ▶︎ BRUCE (XIAOYU) LIU – Polonaise in E flat major, Op. 22 (18th Chopin Competition, second stage) -Chopin Institute

マズルカ

Andrzej Wierciński(アンジェイ・ヴェルチンスキ)
3次予選 マズルカ作品24
Mazurkas, Op.24

3次予選でいろんなマズルカを聴いて、ポーランドの方々のマズルカは独特の揺れリズムがあると感じました。前に記事で書いたけど、遺伝子なんだと思う。ものすごく興味深い演奏。

中でもより独特な揺れリズムを感じたのがアンジェイ・ヴェルチンスキさん。一番ウェットな演奏で、しっとりしたマズルカが私は好きでした。ポーランドの血を感じる3次予選のマズルカは絶品。

YouTube ▶︎ ANDRZEJ WIERCIŃSKI – third round (18th Chopin Competition, Warsaw) -Chopin Institute

ワルツ

Yutong Sun(ソン・ユトン)
2次予選 ワルツ第5番
Waltz in A flat major, Op.42

ソン・ユトンさんのワルツは大人の香り漂う艶のワルツ。とても色っぽい。とにかくずっと聴いていたい、身を委ねたくなるようなワルツ。

20代のはずなのに、人生経験を詰んだ男性の魅力があります。深みがあって、包容力があって…聴いた時ゾクっとしました。こんなん反則やんて。そんな大人ワルツから、黒さを見せるようなポロネーズ第5番への劇的変化も最高です。

YouTube ▶︎ YUTONG SUN – second round (18th Chopin Competition, Warsaw) -Chopin Institute

Bruce (Xiaoyu) Liu(ブルース・シャオユー・リウ)
2次予選 ワルツ第5番
Waltz in A flat major, Op.42

ブルース・シャオユー・リウさんのワルツは、リズムの緩急と音の遊び、跳ねが華麗なワルツ。スピード出したりブレーキ踏んだり、彼の抜群の抑揚センスが本当に好きです。心が躍る演奏。彼の脚も踊っていました。

ラストの意表をつくような溜めにもやられた。ブルースくんがガラコンサート最終日の最後のアンコールで弾いたワルツ第5番もすごく好き!で永久保存版です。

YouTube ▶︎ BRUCE (XIAOYU) LIU – Waltz in A flat major, Op. 42 (18th Chopin Competition, second stage) -Chopin Institute

バラード

Yutong Sun(ソン・ユトン)
1次予選 バラード第1番
Ballade in G minor, Op.23

すごく自然に弾き出したと思ったら、とっても切ない音と大海のようなスケールの大きさを見せてくれたソン・ユトンさんのバラード第1番。人生が詰まったような響きにびっくりして、感嘆が止まらなかったです。

この曲でユトンさんの自然体と静寂がすごく気になりました。それで2次予選楽しみに見たら、かっこよすぎてひっくり返ったんですけど。

YouTube ▶︎ YUTONG SUN – first round (18th Chopin Competition, Warsaw) -Chopin Institute

Martín García García(マルティン・ガルシア・ガルシア)
1次予選 バラード第1番
Ballade in G minor, Op.23

マルティン・ガルシア・ガルシアさんのバラード第1番は、途中で大声で歌い出したのが衝撃すぎました。自分のピアノがすごく好きなんだなと感じた演奏だったし、気合い十分なパッションを感じて、ものすごく印象に残っています。

心の底から歌うスタイルに釘付けになったバラード第1番でした。彼がショパンの作品の中で一番好きな曲らしいです。(インタビューで言ってました)彼が演奏した中で、歌声が一番大きかった曲でもあると思います。

YouTube ▶︎ MARTÍN GARCÍA GARCÍA – Ballade in G minor, Op. 23 (18th Chopin Competition, first stage) -Chopin Institute

Lingfei (Stephan) Xie(リンフェイ・ステファン・シエ)
1次予選 バラード第4番
Ballade in F minor, Op.52

リンフェイ・ステファン・シエさんが1次予選で弾いたバラード第4番。柔らかい音と、飾らない繊細な表現。何か孤独を感じさせるような特別な雰囲気。1曲ごとに間を空けず、世界観を継承するような演奏が素敵。

何がとはっきり言及できないのだけど、このバラード第4番は何度も聴きたくなる魔力のような吸引力があります。1次予選のバラードは必聴。

YouTube ▶︎ LINGFEI (STEPHAN) XIE – first round (18th Chopin Competition, Warsaw) -Chopin Competition

ソナタ

Hyuk Lee(イ・ヒョク)
3次予選 ソナタ第3番
Sonata in B minor, Op.58

イ・ヒョクさんの純粋さが表れるような演奏。カワイの煌びやかな音や、迫力の低音。躍動感、突進力があり、対比するような大きな柔らかい音色もあって表現力の幅を感じました。

青空に何かを描くような澄み切った音は、心に光を射してくれるよう。4楽章を通して人生が表現された演奏で沁みました。ラストを豪快に決めたのも素敵だった!イ・ヒョクさんは2次予選でソナタ第2番も弾いてるけど、3次予選のソナタ第3番がとても好き。

YouTube ▶︎ HYUK LEE – third round (18th Chopin Competition, Warsaw) -Chopin Institute

コンチェルト

Bruce (Xiaoyu) Liu(ブルース・シャオユー・リウ)
ファイナル 協奏曲第1番
Concerto in E minor, Op. 11

コンチェルトはやっぱりブルース・シャオユー・リウさん。特にキレッキレだった第3楽章。スピード感あふれ、何かが覚醒したようでした。心地いい緩急や、音が跳ねたり、光の粒が転がるような瞬間。音が遊んでいるのが見えるよう。彼のコンチェルトには一瞬の芸術がたくさん詰まっていました。

彼のドラマティックな演奏は、私の心をギュンと掴んで離さないです。ガラコンサートと見比べると、挑戦者の演奏から王者の演奏に切り替わったのがわかりました。そしてどちらも素敵なのだ!

YouTube ▶︎ BRUCE (XIAOYU) LIU – final round (18th Chopin Competition, Warsaw) -Chopin Institute

その他

他にもたくさん素敵な演奏があったので挙げたらキリがないのだけど、上記以外でリピートしてるのを3つ。

Hyuk Lee(イ・ヒョク)
1次予選 幻想曲
Fantasy in F minor, Op.49

予備予選・1次予選でイ・ヒョクさんが演奏した「幻想曲」は、ヒョクくんの硬派な演奏が光っていました。主張がしっかりしていて、スケールが大きな表現をするイ・ヒョクさんは、幻想曲やソナタ、コンチェルトなどの大曲が似合うと思います。

深く深くイ・ヒョクさんの世界観に浸ることができる、大変魅力的な演奏でした。心にスッと光を射すような彼のピュアな音楽がとても好きです。

YouTube ▶︎ HYUK LEE – first round (18th Chopin Competition, Warsaw) -Chopin Institute

Gergijs Osokins(ゲオルギス・オソキンス)
2次予選 幻想ポロネーズ
Polonaise-Fantasy in A flat major, Op.61

2次予選でゲオルギス・オソキンスさまが演奏した「幻想ポロネーズ」。彼の音楽はとってもロマンティックな感じがします。力強い響きとロマンティックさの同居が、それこそ幻想的すぎました。

彼の独特の歌い方が私は大好き。最後の音があまりに美しくて、見ながら思わず声を出してしまったほど。1曲目でグググっとオソキンスワールドに引き込まれました。オソキンスさまの演奏を聴いた後は、しばらく病にかかってしまうので危険。

YouTube ▶︎ GEORGIJS OSOKINS – second round (18th Chopin Competition, Warsaw) -Chopin Institute

Bruce (Xiaoyu) Liu(ブルース・シャオユー・リウ)
3次予選 ドン・ジョヴァンニ「お手をどうぞ」による変奏曲 Op.2
Variations in B flat major, Op.2

この演奏はすごかった。3次予選のブルース・シャオユー・リウさんの「ラ・チ・ダレム変奏曲(ドン・ジョヴァンニ お手をどうぞの変奏曲)Op.2」は、彼の躍る演奏に巻き込まれました。

本当に音が躍ってるので、追っかけ出したら楽しくてしょうがないです。彼の脚も踊る。ランナーズハイみたい。もう巻き込まれたら引き戻せません。この曲はぜひ生で聴いてみたいです。この曲に限らずだけど、ラストの終わり方がいつもかっこいい!

YouTube ▶︎ BRUCE (XIAOYU) LIU – Variations in B flat major, Op. 2 (18th Chopin Competition, third stage) -Chopin Institute

ショパンコンクールとピアニストたちに心から感謝します

心が壊れてしまって家で引きこもっていて、ほとんどベッドの上にいた7月。

たまたまショパンコンクールの予備予選をYouTubeで聴いて、そこでオソキンス様の音楽に出会いました。聴きたいと思う音があるだけで生活に少し光が差した気がしました。

オソキンスさんのおかげでショパンコンクールに興味を持ち、1次予選でいろいろなピアニストの演奏を聴いていくうちに、ベッドの上で生活していた自分が食い入るように予選を見るようになりました。

2次予選、3次予選、ファイナルは全てリアタイで鑑賞。東京オリンピックは5分しか見なかったのに、ショパンコンクールは気付けば60時間以上見ていました。

自分でも驚いてるけど、何かに取り憑かれたかのように配信を見ていた毎日。知らなかったピアニストたちの素敵な音楽に出会い、久々にワクワクしたり、しびれたり、切なくなったり、心が動く体験をすることができました。

さまざまな音楽を届けてくれて、私の心に彩りを与えてくれた出場者のみなさんに心からありがとうと伝えたいです。そして、素晴らしい芸術に触れられる機会を全世界に無料配信してくれたショパンコンクールも本当にありがとう。

Twitterでは #ショパンコンクール のハッシュタグも楽しみました。すばらしかった演奏に共感したり、個性的な演奏に対する色々な意見を目にしたり、人それぞれ一瞬の芸術を感じるポイントも違うから興味深かったです。

バイアスがかからないように演奏中はハッシュタグを見ないようにしていました。が、一度演奏中に見てしまった時、皆さんのコメントがおもしろくて笑ってしまって演奏に集中できかった笑。それからはハッシュタグは演奏後に追うと決めました。

本当に充実した2021年10月の1ヶ月でした。昼夜逆転生活はきつかったけど、この生活が終わってしまうのは寂しいです。

ショパンコンクールで出会えた素敵なピアニストさんの音を、もっと聴くことができますように…♪

ピアニストのみなさん、本当にありがとうございました!

moni

引きこもり中のゆるい推し生活を綴ります。スペインのセビージャでフラメンコ留学してました。趣味でピアノを習っていたのは4歳〜16歳くらいまで。素人です。話す言...

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