ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール2022 結果と私の感想

コンクール

ファイナル4日目から1時間ほど待機して、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール2022の結果が発表になりました。

きちんとした授賞式のスタイルでの発表だったので、緊張もひとしお。感動もひとしお。

ユンチャンーーー!

画面の前で思わず叫んでしまった。

1次予選から妙技が光ったすごい18歳。ファイナルで圧倒的なラフマニノフを演奏したイム・ユンチャン(Yunchan Lim)さんがゴールドメダルでした。

ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクール2022の結果

ゴールドメダル
イム・ユンチャン(Yunchan Lim)韓国 20歳

シルバーメダル
アナ・ゲネーシュナ(Anna Geniushene)ロシア 31歳

ブロンズメダル
ドミトロ・チョニ(Dmytro Choni)ウクライナ 28歳

3位のブロンズメダルから呼ばれました。癒し系のチョニさんが3位。

2位はペソのある音がかっこいい安定感のアナさん。舞台上でチョニさんと肩組んでいたのが印象的でした。

ここまで発表された時点で1位が予想できた方は多かったかもしれません。その通り1位だったイム・ユンチャン(Yunchan Lim)!

おとなしそうな方だけど、名前を呼ばれて少し笑みがこぼれたようにも見えました。隣にいたホストファミリー(かな?)の方がとても喜んでいて、マダムは泣いてらした。

公式Twitterが上げてた素敵な写真。隣のホストファミリーさんの感激の表情、後ろのセニョーラの驚きの表情で熱狂の瞬間が伝わります。ご本人が一番クールだね。

ユンチャンさんは舞台に上がってトロフィーをもらった後、謙虚そうに歓声に応じていました。ピアノではあんなに雄弁なのに、本当におとなしそうで神秘的。

受賞者の3人が前に出てみんなで挨拶する時、アナさんが2人の肩を組んであげてました。素敵で頼り甲斐のある先輩で素敵だね。

この授賞式のスタイルは緊張するし、感動も伝わってきます。審査員長&指揮者のオルソップさんが、結果発表の時に一瞬言葉を詰まらせ、舞台に上がったユンチャンさんと愛おしそうにハグしてたのにもウルッときた。

その他の賞

しばらくの間クライバーンの公式サイトは繋がらなくなってて、その他の賞がなんだったのかわかりませんでしたが、公式Twitterで判明しました。

Patricia and Neal Steffen Family Jury Discretionary Award
パトリシアとニール・ステフェン家審査員賞
Andrew Li アンドリュー・リィ(アメリカ)

Raymond E. Buck Jury Discretionary Award
レイモンドE.バック審査員賞
Changyong Shin シン・チョンヤン(韓国)

John Giordano Jury Chairman Discretionary Award
ジョン・ジョルダーノ審査員長賞
Marcel Tadokoro マルセル田所(フランス/日本)

Beverley Taylor Smith Award for Best Performance of New Work
新作のベストパフォーマンスによるビバリーテイラースミス賞
Yunchan Lim イム・ユンチャン(韓国)

Best Performance of a Mozart Concerto
モーツァルト協奏曲のベストパフォーマンス賞
Ilya Shmukler イリヤ・シュムクレル(ロシア)

Carla and Kelly Thompson Audience Award
カーラとケリートンプソン 聴衆賞
Yunchan Lim イム・ユンチャン(韓国)

上の2つは「審査員の裁量による」3つめは「審査員長の裁量による」みたいな書き方で上3つがよくわからなかったけど、特別賞とのことです。

ユンチャンさんはハフの課題曲のベストパフォーマンス賞と聴衆賞も受賞で、優勝と合わせてトリプル受賞。みんなに愛されたんだね!

感想

各ラウンドごとに印象に残った演奏は都度書いていたので、ランダムな感想を書きたいと思います。

1次予選は30人。ハフの新曲トッカータが課題曲で、それを含めた45分のリサイタルでした。ハフのトッカータは最初に聴いたということもあるけど、トップバッターのオソキンス様が新鮮で即興性があり、一番好きだった。その前に弾いたスクリャービンの「黒ミサ」で、不気味さと妖艶さのオソキンスワールドに引き込まれました。

1次予選の最後だったユンチャンはとても印象に残っていて、なかなか衝撃だった。クープランが女性的で繊細で、モーツァルトが上品で…とても美しかったのです。スマートに妙技で魅せるすごい18歳だなと思いました。

2次予選は18人。45分のリサイタル。2次予選はユトンさんのバッハ=ブゾーニ「シャコンヌ」にやられました。“divine”を体現するような神々しいシャコンヌで震えた…。ユトンさんこういう内に向かうみたいな曲が秀逸だと思う。「俺の音を聴け」って言われてるみたい。それぐらいすばらしかったです。

3次予選は12人。60分のリサイタルとモーツァルトのコンチェルト。リサイタルの衝撃はなんと言ってもユンチャンのリスト超絶技巧練習曲でしょ!登場時からゾーンに入っていて、ものすごい集中と超絶技巧に圧倒されました。クープランやモーツァルトとのギャップにも驚き桃の木。

ユンチャンは、モーツァルトのコンチェルトもとても印象に残ってます。煌びやかなカデンツァ、内省的な第2楽章、上品で「こんな感じどぉ?」と絶妙コントロールだった第3楽章。多彩な音色が引き出され、線が細い感じもモーツァルトのイメージにぴったりでした。人生何度目かなのかな。

もう1人、モーツァルトのコンチェルトが素敵だったのはマルセル田所さん。装飾が可憐で丸くて本当にうっとりします。第2楽章は本当に美しく、第3楽章はマルセルさんの魅力を堪能できる詰め合わせセットみたい。medici.tvアーカイブ動画の29:47のところ最高です。シフォンブラウスみたいな透明感のある優美なモーツァルトを心の底から楽しみました。すばらしかったです。

ファイナルは6人。コンチェルト2曲。コンチェルトの衝撃は、記憶に新しいユンチャンのラフマニノフ3番。指揮者さんもオーケストラも、彼のピアノに吸い寄せられていて、オケを引っ張っていたようにも見えました。集中と密度、表面張力のようなギリギリの瞬間…もう鮮やかな妙技でした。圧巻すぎて「すごい」しか言葉が出なかった。観客はリアルスタンディングオベーション。舞台上の演奏者、観客、配信の視聴者みんなを熱中させたであろうすごいコンチェルトでした。

それと、オーケストラがどのように演奏するのか、ピアニストの影響はとても大きいんだなと思いました。同じ曲でもピアニストの演奏で全然違うオーケストラになる。ある意味オーケストラを引っ張っていくような吸引力。ユンチャンさんはその吸引力がすごかった。自身の演奏で周りを魅了して吸引していた感じ。魔術師のようだ。

初めて聴いた中では甘美な音色のシン・チャンヨンさん、ジャズやゴスペル感あるクレイトン・スティーブンソンさん、素敵だなと思いました。

各コンテスタントの演奏はmedici.tvでコンテスタントごとにアーカイブ検索して聴くことができます。最初しか広告出ないのでおすすめ。
▶︎ cliburn.medici.tv

旋風に巻き込まれたクライバーン

早朝のセッションはファイナルしかリアタイできなかったけど、クライバーンコンクールの配信楽しみました。

ハフの新曲の演奏含む45分・45分・60分のリサイタル、モーツァルトのコンチェルトとコンチェルト2曲と、盛りだくさんで濃厚な内容はコンテスタントさん大変だっただろうなと思います。

課題曲以外は自由なプログラムだったのでひとりひとり個性があって、視聴者としてはさまざまな曲の、さまざまな演奏のすばらしさを知ることができて幸せでした。

3位と2位はベテラン層のお2人。1位は史上最年少優勝のイム・ユンチャン。入賞者は3年間のマネジメントとツアーの契約があるみたいなこと言ってたので、コンクールが終わったと思ったら今度は公演で忙しくなるんだね。

妙技の18歳イム・ユンチャンが巻き起こしたすごい旋風に、完全に巻き込まれたクライバーンでした。このまま神秘的な存在でいてほしいな。日本にも来てね!必ず行きます。

コンテスタントの皆さん、たくさんの素敵な演奏をありがとうございました!

moni

引きこもり中のゆるい推し生活を綴ります。スペインのセビージャでフラメンコ留学してました。趣味でピアノを習っていたのは4歳〜16歳くらいまで。素人です。話す言...

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