ゲオルギス・オソキンスの音が聴きたい!光をくれたピアニスト

スペインから戻ってきて心が壊れてしまった時、1日のほとんどをベッドで過ごしていました。
自然の音以外を聞きたくなくなりました。テレビの音、音楽、人が話している声、サイレンなど音に敏感になって、とにかく無の状態になりたかった。
そんな時間が2ヶ月以上続きました。
ベッドの上で何気なくYouTubeを開いた時、ショパンコンクールの予備予選が開催されているのを見つけて、なぜかわからないけど聴いてみようと思って画面をタップしました。
iPhoneをベッドサイドに置いて、BGMのようにショパンコンクールを聴いているうちに、ピアノの音に癒されている自分がいました。
4歳から高校生までクラシックピアノを習っていたので、子供の頃に聴いていた音は落ち着くのかなと思いました。
ゲオルギス・オソキンスの音に心奪われる
時間だけはたっぷりあったので、YouTubeで予備予選をずっと流して聴くようになりました。
そんな中で心奪われた演奏、いや最初に奪われたのは耳かもしれません。とにかく「なにこの音!」と思ったのは、ラトビアのピアニスト ゲオルギス・オソキンス(Georgijs Osokins)さんの演奏です。
この人の出す音が好き!
柔らかくて、軽やかで、でも強さもあって。全ての音の粒が心地よくてうっとりする演奏。
何もなくて部屋に引きこもっていた私には、ゲオルギス・オソキンス(Georgijs Osokins)の音が輝いて見えました。
とにかくこの人の演奏をもっと聴きたい!と思いました。
オソキンスを聴き漁る
私はかなりの間クラシックピアノから離れていたので、世界のピアニスト事情には疎く、その時は前回2015年のショパンコンクールのことも全くわかっていませんでした。
なので、7月の予備予選の演奏を聴いた後にYouTubeでゲオルギス・オソキンス(Georgijs Osokins)の動画を検索した時にはじめて、2015年のファイナリストだということを知りました。
ありがたいことに2015年ショパンコンクールの様子は、予備予選から全て見ることができます。
英雄ポロネーズ
順番にオソキンスの演奏を聴いていて、2次予選のポロネーズ「英雄」(Polonaise in A flat major Op.53)を聴いた時におったまげました。
なんてロマンティックで高貴なポロネーズ「英雄」なの!
彼の弾き方、音、間の取り方、表現の仕方。全てに釘付けになり、聴きながらOleeeeを連発してました。英雄はあなただよ!
バルカローレ(舟歌)
個性的な揺れにうっとりするバルカローレ(舟歌)は、まるで全身に血液を送り込んでくれるようです。
この曲の揺れがこんなに心を揺さぶるものだったなんて!本能的に惹かれるバルカローレで、大海につながるようなパノラミックな揺れが大好きです。
朝日を浴びながらオソキンスさんのバルカローレを聴いたら、一日のエネルギーチャージが完了しそう。心が明るくなりました。
マズルカ
初めてオソキンスのポロネーズ「英雄」を聴いた時に、とてもロマンティックな表現をする人だなぁと心を奪われたのですが、妖艶さはマズルカにもとっても出ていると思います。
2015年ショパンコンクール3次予選で弾いたマズルカ Op.59の、特に2楽章の艶っぽさが好きです。なんてロマンティックなマズルカ!
オソキンスの音を先取りするような、踏み込むような弾き方が好き。動画の0:32のような。ここ何度もリピートしてる。
軽やかで艶のある第2楽章から、骨のある第3楽章への転換も大好き。
ソナタ
ソナタ第3番(Sonata in B minor Op.58)ぶっ飛びました。
抑揚や速度の調節。繊細、煌びやか、柔らかい、透き通ったなど多彩な音。劇的な人生の物語を体験しているようなロマンティックさにはうっとりします。独特なリズムと歌い方。ラストの盛り上げ方は秀逸でした。
椅子に座って聴いていて、思わず立ち上がりたくなったくらいです。
私はピアノのプロでも評論家でもないから、技術的なことに言及したり芸術的な表現をすることはできないし、なぜ好きかと言われると細かく分析できていない。
とにかく彼が表現する音が好き。ただそれだけです。ただただオソキンスさんの演奏に心奪われるのです。
ワルツ
ソナタ第3番であれだけ聴かせた後のワルツ第1番 Op. 18(華麗なる大円舞曲)には、思わず笑顔になりました。
なんて軽やかでそれこそ華麗で、光景が目に浮かぶような素敵な音を出すんだろう。
ワルツ第1番は人生の中で聴いた回数が多いし自分でも弾いたことがあるけど、オソキンスのワルツ1番は私の中のNo.1になりました。
ワルツ第1番の演奏も、音を先取りする、踏み込む弾き方がわかりやすく出ていると思います。
動画の1:52の部分が一番わかりやすい。楽譜上は2つの音を同時に弾く部分だったと思うけどあえてずらす。ここ何度も聴いたし、本当に好きすぎて何度聴いてもジタバタしちゃいます。
2015年ショパンコンクール3次予選のオソキンスさんのプログラムは本当に好きなんですが、ワルツ第1番の音の余韻を残しながら弾き始めたワルツ第5番 Op.42はオソキンスさんの即興性や遊び心のある音楽を感じることができます。
まるで彼のリサイタルを見ていて夢の世界に連れ行かれるような、うっとりする演奏。
彼の独特なリズムの取り方が大好き。軽やかな音の中に急に一音のフォルテが入ったり、心からワクワクする音楽です。最強のワルツ第5番。
なんてロマンティックで軽やかで楽しくて驚きがある演奏なんだろう!1:50あたりの妖艶さがものすごく好きです。
ピアニスト、アーティスト、エンターテイナー。本当にすばらしい!好き!
そりゃ会場で畳み掛けるような「ブラボー!」が出ちゃうよね。YouTubeで聴いても興奮で眠れなくなるくらいだから、会場で聴いたらどうなっていたんだろう。
ポロネーズ「英雄」とワルツ1番以外の曲は、コンクールのライブ収録CDがサブスク配信されています。絶賛リピート中!
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録音CDではないですがこちらもおすすめ!ノクターン第20番(遺作)やワルツ第1番、ワルツ第4番(猫のワルツ)が収録されています。
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完璧ではないピアノ
ゲオルギス・オソキンス(Georgijs Osokins)さんの弾き方や表現の仕方は個性的だなと思います。
私は「これがショパンらしい演奏だ」とか、細かいテクニック的なものはわからないけど、コンクールでも自分のリサイタルで弾いているような、会場を自分の空気にしている感じ。
だから自由だし、聴いていて楽しい。引き込まれる。
オソキンスさんの表現力や芸術性に心底惹かれる理由は、彼のインタビューにもありました。
英語を勉強中なので訳がヘンテコだったらすみませんなんですが
完璧さを求めすぎると最も大切な美しさが失われる。例えばミスが多くても、詩的表現が素晴らしい演奏ができたとしたら、それは私を向上させる方法。完璧の遠くにいるように心がけている。
というようなことを言っていると思われます。
この考え方とても好きだなと思いました。
フラメンコのアーティストから「不完全=imperfectoであれ。」と言われたことがあります。毎回完璧にできるのだとしたらそれは単なる練習の成果であり、芸術ではない。完璧じゃないからフラメンコなのだと。
ピアノも同じなんだなと思いました。芸術は完璧にはならない。完璧にならないから芸術なんだと。
聴きたい音がある喜び
ショパンコンクールでピアノの音を聴くまで、音に敏感になっていて、音に触れるのが嫌でした。
ショパンコンクールでたくさんのピアニストが美しい音を奏でてくれたおかげで、徐々に音を聴くことができるようになりました。
そして、ゲオルギス・オソキンス(Georgijs Osokins)の音楽に出会えたことで、聴きたい音があるって幸せだなと、何もなくて真っ暗だった生活に光を感じはじめることができました。
9日の2次予選でまたオソキンスさん音楽が聴ける!楽しみ。
いつかオソキンスさんの音楽を直接聴いてみたいです。
オソキンス大好き!
Te admiro Georgijs Osokins!!
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