ピュアで硬派なイ・ヒョク(Hyuk Lee)のピアノは幸せになる

第18回ショパンコンクールで見て、表現が好きだったピアニストその5。
韓国のHyuk Lee(イ・ヒョク)くんです。まだまだ若い21歳。
2次予選のドキハラな状況で動じずに堂々と弾いていたのが印象的で、突進力と躍動感があるスケルツォや壮大なスケールのソナタ第2楽章、力強い英雄ポロネーズを見てオレー!と思いました。
ピュアでかつ硬派な表現という、とてつもなく魅力的な音楽を奏でる方。そして彼の音楽を聴くと幸せな気持ちになります。
3次予選、ファイナルもHyuk Lee(イ・ヒョク)くんの魅力をたくさん感じる演奏を聴くことができたので、書いてみようと思います。
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3次予選でHyuk Leeが演奏した曲
Hyuk Lee(イ・ヒョク)くんが3次予選に出場したのは、10月16日のイブニングセッション前半の2番目です。ポーランドのヤコブさんの後でした。
演奏順は以下。使用ピアノは「カワイ(SHIGERU KAWAI)」です。
マズルカ作品17 / Mazurkas, Op.17
ソナタ第3番 / Sonata in B minor, Op.58
彼はカワイのピアノを操るのがとても上手だと感じます。はっきりした音の粒は晴れやかに聴こえ、豪快で迫力ある表現も光ります。
青空に光を射すようなHyuk Leeのピアノ
3次予選でHyuk Lee(イ・ヒョク)くんが舞台に登場する前、まだ司会の人が話しているタイミングで舞台袖から出ていこうとしてスタッフに止められ、「あ、そっかまだか」という感じで笑顔になった瞬間が捉えられ、めちゃくちゃかわいかったです。
登場時も満面の笑みで客席に挨拶をし、イ・ヒョクくんのまっすぐな笑顔にキュンとしましたわたくし。
ラ・チ・ダレム変奏曲
モーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」の「お手をどうぞ」主題の変奏曲だそうで、なるほどモーツァルト風味を随所に感じます。
カワイのピアノから奏でられる煌びやかで曇りがない音を聴いて、ヒョクくんは心が美しいのだろうなと思いました。楽しそうに弾いている姿はまるで天使です。
天真爛漫なイ・ヒョクくんに合った曲で、こちらも楽しく幸せな気持ちになりました。
マズルカ作品17
弾むような軽快なリズムで弾き終えた変奏曲から一転、マズルカでは華やかな音や大人っぽい物憂げな音など、変奏曲とは異なる音を聴かせてくれました。
同じカワイのピアノでもここまで多彩な音が出せるとは、ピアノを上手に操り表現される方なんだなと思いました。
ソナタ第3番
3次予選のイ・ヒョクくんのソナタ3番はとても好きで、印象に残っています。
壮大な物語のはじまりを予感させるような第1楽章。澄み切った伸びやかでピュアな音は青空に何かを描くようで、優しく心にスッと入ってきます。第2楽章はまっすぐな突進力と躍動感。第3楽章は大きく柔らかく包まれるような表現。第4楽章はよく響く低音とキラキラした高音のバランスが心地よく、ラストは豪快に低音を響かせて決めたのがかっこよかったです。
まるで壮大なストーリーを見せてくれたようなソナタでした。心に光を射してくれる演奏でとても好き。個人的にソナタ賞はHyuk Lee(イ・ヒョク)くんにあげたいです。
イ・ヒョクくんを見ていると、とにかくピアノを弾くことが好きでしょうがない、楽しくてしょうがないという様子。弾いた後の挨拶も退場も笑顔で、見ているこちらの心が温かになります。
イ・ヒョクくんは2次予選でもソナタを弾いて、ソナタが好きなんだそうですがその理由は「ソナタには人生が表現されていて、各瞬間に物語があるからソナタが好き」とインタビューで言っていました。だから、彼のソナタから物語が見えるようだったんだな。
3次予選のYouTubeアーカイブ▼
ファイナルのHyuk Lee
ファイナルにHyuk Lee(イ・ヒョク)くんが登場したのは3日目の3人目。演奏曲は協奏曲第2番で、使用ピアノは「カワイ(SHIGERU KAWAI)」です。
協奏曲第2番を選んだのはガジェヴさんとガルシアガルシアくん、イ・ヒョクくんの3人だけです。
ファイナルの演奏でも、イ・ヒョクくんはカワイのピアノを上手に操っておられました。弱い音も一音一音美しく聴こえるし、高音は煌びやかな音の粒が大変魅力的です。
彼はペダルの踏みかえも上手なのではないかと思いました。濁った音がなく、澄んだ音が響きます。速弾きも一音ずつ明瞭で、技巧派な面もありそうです。
存在感があった一番最初の音。とっても迫力があった第1楽章は、オケと共に盛り上がりました。
第2楽章は青空の光を感じるような美しい歌と、静寂のコントロール。下の動画20:33あたりの突き抜けるような音が印象的。22:35後の絶妙な静寂からの胸がキューっとなるような切ない歌い方はすばらしい以外の言葉がないです。
優雅さと華やかさがあった第3楽章。キラキラした音の粒が軽快に踊る姿が見えて、幸せな気持ちになりました。晴れやかな気持ちになる堂々としたラストが最高!
イ・ヒョクくんは若くてかわいらしい見た目でありながら、しっかりと主張がある音楽を奏でるところが素敵だと思います。
協奏曲第2番はこんなに切なくて、キラキラしていて、聴いていて幸せになる曲なんだと、イ・ヒョクくんのおかげで知ることができました。すばらしかったです!
イ・ヒョクくんが協奏曲第2番を初めて演奏したのは12歳の時だそうです。(若い!)彼にとってとても衝撃的だった曲で、特別な思いがあるのだとインタビューで言ってました。ショパンコンクールのファイナルで演奏して、さらに思い出深い曲になったのではないでしょうか。
ファイナルのYouTubeアーカイブ▼
Hyuk Leeの1次予選・予備予選
順番が前後してしまいましたが、Hyuk Lee(イ・ヒョク)くんの1次予選、予備予選も見ました。
どちらも「幻想曲」を弾いていて、とってもいい。めっちゃ好きです!
Hyuk Lee(イ・ヒョク)くんの主張がはっきりしていて、硬派で深みのある「幻想曲」の世界観がとても伝わってきました。幻想曲やソナタ、コンチェルトのような大曲をとても魅力的に弾く方ですね!
「幻想曲」はわたしが大好きな曲なんですが、Hyuk Lee(イ・ヒョク)くんの「幻想曲」は、今回のショパンコンクールで聴いた中で一番好きだったかも。
そして、毎回演奏後の笑顔とお辞儀がかわいすぎるのは反則。
1次予選のアーカイブ▼
のだめみたいなHyuk Lee
Hyuk Lee(イ・ヒョク)くんが演奏している姿を見て、「のだめカンタービレ」ののだめに似ていると思いました。
乗ってくるとのだめみたいに口を尖らせたり、楽しくてしょうがないと笑顔になったりする姿がのだめと重なります。それと純度が高い音楽って感じがするのも、のだめに似てる。
3次予選のソナタの第4楽章では口尖らせて笑顔で弾いてたし、コンチェルトでも第3楽章で口が尖ってきて笑顔も出てきました。こうなった時のイ・ヒョクくんは最強に見えます!
イ・ヒョクくんはバイオリンも弾くんですよね。Hyuk Lee YouTubeチャンネルにバイオリンを弾く動画があります。
何かのインタビューでヒョクくんは指揮者になりたいと言っていたと思います。(動画が探し出せませんでしたすみません!)ピアノとバイオリンが弾けて指揮者を目指す人と考えると、千秋先輩にも重なりますね。作曲もされるようです。
ショパンコンクールの事前インタビューでは、ピアノを弾く時やバイオリンを弾く時に、単音ではなくオーケストラのような音楽を奏でることが大切だとも言っていました。
常にオーケストラのイメージで弾いているから、壮大なソナタが演奏できるのかなと。コンチェルトも本当にすばらしかったです!
また、チェスもかなりお好きのようでチェスの大会(?)にも出場したとのこと。チェスをしている時は、それこそ藤井聡太さんに似ているのかも。
チェスとピアノの共通点について、集中力、分析力や計算が必要で、チェスをやることがピアノの演奏にもつながっていると、インタビューやショパントークで言っていました。感覚で弾くのだめよりも千秋先輩の方が近いのかな?
イ・ヒョクくんはとっても賢い方だなと思いました。インタビューの受け答えから知性を感じるし、考えや意思が一貫していて清々しいです。
母国語の韓国語に加え、英語、ロシア語を話すことができ、ポーランド語にも興味があって勉強しているのだそうです。インタビューでもポーランド語で自己紹介していました。
私は言語を音楽は密接な関わりがあると思っています。イ・ヒョクくんがポーランド語やポーランドの文化を勉強することは、ショパンの音楽への理解を深めることにもつながっているのだと思います。
Hyuk Leeの今後が楽しみ
各予選後のインタビューでは毎回「この舞台で演奏できることが幸せだ」と言っていたのが印象的でした。
ファイナルの後のインタビューでは「夢が叶った」と言っていたのを見て、本当にショパンが好きで、今回のコンクールに出たことは彼のピアニスト人生にとってものすごく大きなことだったのだろうなと感じました。
まだ21歳で若いイ・ヒョクくん。これからもピアノ、バイオリン、チェス、さらに言語を通して自らの芸術性を高めていかれるのだろうと思います。
ファイナルでは入賞にならなかったけど、コンチェルト第2番はイ・ヒョクくんの演奏が一番好きでした。最後に光が射して、幸せになる音楽。
聴く人をここまで幸せにしてくれる音楽って本当に素敵ですね。
どこかで直接彼の演奏を聴ける日が来ますように…来日される時は絶対コンサート行きます!
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