チョ・ソンジン ギルモアフェスティバルのリサイタル配信

DGプレミアムでチョ・ソンジンさんのギルモアピアノフェスティバルでのリサイタルが有料配信されています。
演奏曲はラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」と「夜のガスパール」にショパンのスケルツォ全曲。
なんとなく内向的な性格に見えるチョ・ソンジンさんだけど、音楽は感情がはっきり見える気がしました。特にスケルツォはそう感じ、悟りを開いたような肝が据わってる演奏にも思いました。
5月21日までの期間限定配信なので気になる方はぜひ!
チョ・ソンジン ピアノリサイタル@ギルモアフェスティバル
ギルモアのピアノフェスティバルは、2022年4月8日と4月24日〜5月15日まで開催されていたそうです。4月8日初日はユジャ・ワンが出演。チョ・ソンジンさんが出演したのは5月3日。
演奏場所はアメリカミシガン州カラマズーにある「Chenery Auditorium」で、1920年に建設された歴史あるホール。残念ながら映像では座席の雰囲気まではわからないけど、写真で見るととても素敵なホールです。
DGプレミアムで配信されているのは5月3日の演奏で、9.9ユーロの有料配信となっています。迷ったけど購入した!
同じくDGプレミアムで無料配信されているシューベルトの「さすらい人幻想曲」の内向的な表現が素敵で、YouTubeで観たショパンのバラード全曲コンサートの様子も好きだったので、チョ・ソンジンさんのピアノリサイタルをぜひ観てみたいと思いました。
演奏曲
リサイタルは2部制になっています。
M. Ravel:
Pavane pour une infante défunte
Gaspard de la nuit
「夜のガスパール」とてもよかった!
芯が太く、内向的な暗黒感。ラヴェルはとても知的で色彩豊かな作曲家だと思いますが、チョ・ソンジンさんの賢そうで落ち着いた性格を通じてはっきりと「これが私のラヴェルです」という音楽を見せてくれたように思いました。
家のスピーカーで聴いているからかもしれませんが、部屋を大きく包むような深い音。決して背が高いピアニストではないと思うけど、音楽が大きく感じます。
ところで「亡き王女のためのパヴァーヌ」の演奏の途中でフルートの音みたいなものが!?まさか携帯だったらけしからんのぅ。
F. Chopin :
Scherzo No. 1 in B minor, Op. 20
Scherzo No. 2 in B flat minor, Op. 31
Scherzo No. 3 in C sharp minor, Op. 39
Scherzo No. 4 in E major, Op. 54
チョ・ソンジンさんはショパンのスケルツォ全4曲のアルバムをリリースされてます。が、このアルバム実はまだ聴いたことがなかった。
2015年ショパンコンクールの時のスケルツォ第2番しか観たことがなくて、今回こちらの配信で初めてチョ・ソンジンさんのスケルツォ全曲を楽しませていただきました。
ショパンのスケルツォはピアニストの遊びの部分が際立つので、聴き比べするとおもしろいです。ポゴレリチやルービンシュタイン、ダンタイソン、ユンディ・リなど、とても独特で思わず聴き入ってしまいました。
チョ・ソンジンさんも個性的な演奏。特に静寂の作り方が特徴的。
「最初の音楽」とも称される静寂をどう表現するか。聴き手に与える印象はとても大きい。チョ・ソンジンさんのスケルツォ全曲は、静寂コントロールを軸として多彩なテイストを堪能できるコース料理みたいでした。
全体的に潔いっすね!
多彩な表現も魅力。乾いた音と疾走感。遊び心の中にあるノーブルさ。左手がとてもリズムや強弱の主張があって好きです。
チョ・ソンジンさんはクールボーイなイメージだったけど、結構表情豊かに弾いていて、ピアノを弾く時の表情と音楽表現がかなり一致してますね。勢いよく弾いた後に、左手で椅子を押さえてる時もあったし。シュッとした印象がちょっとだけ変わりました。
中間部で背筋をピンっと伸ばして弾く瞬間は、悟った僧侶のようにも見え、視覚的にも違う空気感を伝えてくれます。なんとなく肝が据わった禅の世界。
1曲ごとに拍手が上がってたけど、スケルツォ第4番の後は客席そっこースタオベでした。
8月の横須賀リサイタルでスケルツォ聴けるかなーとプログラム見たら、スケルツォ全4曲がプログラムされているではないか!マジか。これ生で聴けるんですね!
F. Chopin:
Etude in C Minor, Op. 10 No. 12 “Revolutionary”
このアンコールはなかなか意味を感じる選曲ですね。素晴らしかった!引き際も美しく。
潔い禅の世界
チョ・ソンジンさんのリサイタルを観て、潔い印象を受けました。そして高貴な禅の世界。
とても安定感のある完成度が高い演奏をされる方だと思います。脆い部分がないと言うか、技術的に厳しそうと感じる瞬間がほぼなく、不快に感じる音も出ない。
そのせいか、どうしてもこれまで冷たい印象があったのですが(クールな性格に見えるからかもしれない)、リサイタルの演奏を見て内側にははっきりした喜怒哀楽があるのではないかなと思いました。
外に感情をあまり出さなさそうなクールガイに見えるけど。スケルツォの演奏ごとに客席から拍手が起こって、ぺこってお辞儀するのがシャイな感じに見えました。
最近は映画「アマデウス」を観た影響もあって、モーツァルトの有名なピアノ協奏曲第20番をよく聴いてます。
チョ・ソンジンさんのモーツァルト協奏曲20番も聴いてます。第2楽章の最後の方のソロ部分でアレンジしているように聴こえるんだけど、かわいい感じになっていて、クールボーイとのギャップにドキッとしました。
完成度の高い音楽と未完成の音楽のどちらが魅力かと言われると、とても難しい問いです。安定感がある音楽には心が満たされ、脆くて繊細な音楽には心が動かされることがあるから。
私は個人的には後者が好き。かな?
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