牛田智大デビュー10周年ピアノリサイタル 東京オペラシティ 2022/3/14

2022年3月14日にデビュー10周年を迎えられた牛田智大さん。
デビュー当日からちょうど10年のこの日は、東京オペラシティで牛田智大さんのピアノリサイタルがありました。
デビュー10周年でもまだ22歳。とてもお若い印象を抱いていましたが(実際お若いのですが)、想像していたよりもずっと渋い演奏でした。
10年の熟成と葛藤を感じるような音楽。
牛田智大さんデビュー10周年おめでとうございます。
牛田智大デビュー10周年リサイタル@東京オペラシティ
牛田智大さんのデビュー10周年リサイタルは各地で行われていて、3月14日と15日が東京でのリサイタルでした。14日がオペラシティ、15日がサントリーホール。
ホールに行く前はどこかでお茶して気持ちを落ち着ける時間を取ることが多いですが、この日はあまり時間がなかったのと今月コンサートに行き過ぎて金欠モード発動なので、カジュアルなセガフレードに入りました。
さて東京オペラシティに行ったのは、11月のブルース・リウくんのリサイタルぶりです。立派なパイプオルガンと、上から光が差し込むような木目調の内装が美しくて好きなホール。
牛田智大さんのデビュー10周年をお祝いするお花がロビーに飾られていました。有志のプロジェクトなのかな?素敵ですね!
第一部
デビュー10周年のリサイタルはオールショパンプログラムです。牛田智大さんは正装でご登場。
子供の頃の牛田さんをテレビでお見かけしたことがあって、小柄なイメージを勝手に持っていました。実際の牛田さんは痩せているけど、そんなに小柄な方ではなさそう。
ノクターン第8番 Op.27-2
バラード第4番 Op.52
舟歌 Op.60
ポロネーズ第6番「英雄」Op.53
プログラムには牛田さんによる曲紹介が書かれていました。これはとても貴重です。
その曲がどういう曲なのかを一般的な角度から紹介されているのではなく、牛田さんの考えや解釈を知ることができます。私のようなピアノ素人にはとてもありがたく、牛田さんが描く世界観をイメージしながら演奏を聴くことができました。
バラード4番、舟歌と聴いていくうちに、牛田さんてものすごく渋い演奏をされる方なんだなと思いました。
人気のある方だからなんとなく華やかなイメージを持っていて、若くてフレッシュな演奏なのかなぁと想像していましたが、それとは対極にいるような音楽でした。
ボジョレーヌーボーだと思っていたら、上質なフルボディの赤ワインだったみたいな感じで、いい意味で期待を裏切られました。
プログラムにも記載がありましたが、ポロネーズ「英雄」は楽譜に指示されているテンポを重視し、抒情的なアプローチに重きを置いたとのこと。長老や重鎮が弾いているような、ずっしり重たい「英雄」でした。
バラード4番と舟歌の間に起こった拍手。個人的にはあれはなしで続けて弾いてほしかった。
プログラムには「(第1音をどのように演奏すべきか演奏のたびに考え続けていて)舟歌の前にバラード第4番を置くことで、第1音の意味を規定させることを試みます」と記載があったので、ここはつながる世界観が見たかったかなと…。
第二部
いつも休憩時間はトイレに行くのですが、この日は2部のプログラム楽曲紹介をじっくり読みたいと思いました。
3つのマズルカ Op.56
マズルカ Op.68-4
幻想曲 Op.49
幻想ポロネーズ Op.61
第二部は第一部よりもさらに重たい、苦悩や葛藤を感じるような音楽でした。全体を通してキラキラや華やかさとは程遠い暗い世界を感じました。
特に「幻想ポロネーズ」は、牛田さんの10年の熟成と葛藤が見えるような演奏。間をたっぷり取って、ピアノと、または自分自身と対話しているようにも見えました。
デビュー10周年の華やかな空気感はあまりなく、それが牛田さんの音楽への向き合い方を表しているのかなと感じました。
アンコール
カーテンコールの後、牛田智大さんがデビュー10周年にあたる思いやリサイタルへの思いをお話されました。お話の仕方からも落ち着きを感じます。
アンコールは4曲!オールショパンでたっぷり聴かせてくれた後に、リストやシューマンで異なる世界を見せてくれました。
リスト:愛の夢第3番
シューマン=リスト:献呈
シューマン:トロイメライ
4曲目のシューマンの「トロイメライ」が秀逸でした。リサイタルを厳かに締めくくる音楽に包まれました。
予定があるのかもしれないけど、アンコールの前に退席してしまうのはとてももったいない。時としてアンコールでその日の一瞬の芸術が降りてくることもあるから。
10周年おめでとうございます
MCからも落ち着いたお人柄、大人な考えが垣間見えました。自分が22歳の頃とは大違いすぎてビビる。
演奏が終わった後は余韻に浸りたく、すぐ電車に乗る気分になれないので、新宿駅まで30分ほどてくてく歩きました。
デビューから10年間、いろいろなことを抱えながら過ごしてきたのかな、今も何か葛藤があるのかな、など考えながら。
同時に牛田さんは、ご自身のことをかなり客観的に見られている方ではないかとも思いました。アイドル的な印象がどうしてもありましたが、ご自身は自分をそうは思ってないのではないかな。
真摯にピアノに向き合ってきた10年が、ものすごく渋い老成感のある演奏につながっていたのではないかと感じました。
牛田さんがNHKに密着されていたテレビ番組を見た時にも思ったのだけど、わがままな部分も見せてほしいなと思ったりします。全てが理想的で神対応すぎて逆に心配になっちゃう。
牛田さんはファンがとても多い方だから、長年ファンというわけでもない私がこんなこと書くのはおこがましすぎる点は理解しております。
ご了承くださいm(_ _)m
次の10年で、牛田さんはどのような熟成を見せてくれるのでしょうか。牛田さんのイメージがフルボディの赤ワインに変わった夜でした。
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