Yutong Sun(ソン・ユトン)の自然体と静寂が魅力的なピアノ

第18回ショパンコンクールの1次予選を見ていて表現が好きで、気になったピアニストがいます。
中国のYutong Sun(ソン・ユトン:孫楡桐)さん。年齢はまだ26歳だけど、人生経験を詰んだ先輩のような落ち着きがあるように見えました。
大泉洋のような見た目であまり表情変えずに弾くんだけど、紡ぎ出される音楽の表現力がすごかったです。
Yutong Sunが1次予選で弾いた曲
Yutong Sun(ソン・ユトン)さんが1次予選に登場したのは、10月4日の2日目モーニングセッションです。日本人が多く出演していた回で、角野隼斗さんの後でした。
弾いた曲順は以下。
ノクターン第13番 / Nocturne in C minor, Op.48 No.1
エチュード10-1 / Etude in C major, Op.10 No.1
エチュード25-5 / Etude in E minor, Op.25 No.5
いつもの空気のままって感じで弾き始めたと思ったら、いきなり心を掴まれるような「バラード第1番」で思わず手を止めて見入っちゃいました。
1次予選で私が感じたYutong Sunの魅力
Yutong Sun(ソン・ユトン)さんは、最初に弾いた「バラード第1番」で見ている人の多くを「おっ!」と思わせたのではないかと思います。
なんて切なく美しい音なんだろう。大海のような壮大なスケールに包まれていて、心をギューッとされるようでした。
ふらっとやって来てピアノ弾いてるような脱力感
表情を変えずに弾くのに、音楽はどんどん表情を変える
時々片側の頬が上がって笑顔になりそうになるけど、クールをキープ
人生が詰まったような切なく美しい響き
隣でささやいてくれるような優しさ
間や溜めが自然で心地よい
だからずっと聴いていられるピアノ
学校で教室にいる大泉洋似の先輩に「ピアノ弾いてくださいよ〜」ってお願いしてサラッと弾いてくれたそのピアノが、ものすごい表現力に溢れていて度肝抜かれて無言になってしまった。
そんな状況のようでした。雰囲気は学校の先輩というより、長老のような渋さがあるんですけど。そして大人の色気も感じます。
なんだこの素敵な人はー!!!目が離せませんでした。
ショパンコンクールでは多くの出場者が「バラード第1番」を弾いていますが、1次予選でバラード1番を弾いた人の中で印象に残った2人のうちの1人がYutong Sun(ソン・ユトン)さんです。
2曲目の「ノクターン第13番」は渋く、気高い男性の魅力を感じる演奏です。
ノクターンが終わる頃、会場でスマホが鳴ってしまいましたよね。一瞬キョロっとされていましたが動揺せず、3曲目のエチュードに入る直前に椅子の横で右手をカタカタさせていたのがかわいかったです。
1次予選YouTube動画▼
Yutong Sunの自然発生的な音楽
Yutong Sun(ソン・ユトン)さんの間の取り方が素敵というか、音と音との間の静寂を大切にしている感じが好き。過剰な動きや表情がなくて、自然に湧き上がるものを表現しているところが好きでした。
以前にフラメンコの舞台で「静寂が最初の音楽」という言葉を聞いたことがあります。Yutong Sun(ソン・ユトン)さんの演奏を聴いて、その言葉を思い出しました。
YouTubeにポーランドラジオのYutong Sun(ソン・ユトン)さんのインタビューがありました。
ショパンについて「spontaneous」という言葉を使ったYutong Sunさん。英語あまり得意じゃないけどこの単語はわかるぞ!スペイン語だったら「espontáneo/a」=「自然発生的な」ということですね。
Yutong Sunさんについてショパンの音楽は「自然発生的な」もの。それがYutong Sunさんの自然体な演奏に表れているのかなと思いました。
natural=自然ではなく、spontaneous=自然発生的な/自発的なと表現したところも興味深いです。
もう一度聴きたいYutong Sun
Yutong Sun(ソン・ユトン)さんの演奏は最初から最後まで見入ってしまいました。私的にはやはり最初の「バラード第1番」が好きでした。
最後にバラードを弾く人が多い気がするけど、彼の場合はバラードから弾き始めるのが良かった気がします。最初にガッツリ心掴まれましたからね。
「もっとこの人の演奏を聴きたい」と思い、4曲終わるまで心地良い音を楽しみました。
彼の表現力が好きだなぁと思って気になって調べたら、予備予選免除の実力者だったんですね。
ショパンコンクールでYutong Sun(ソン・ユトン)さんの音楽に出会えてよかった。
2次予選は「バラード第3番」を弾くようです。また彼のバラードが聴ける!
軽やかな「ワルツ第5番」や重厚感ある「ポロネーズ第5番」をYutong Sun(ソン・ユトン)さんはどんな風に弾くのか、とっても楽しみです!
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